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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

役と共鳴する

 この日は、主人公の一ノ瀬歩が働く与一物産のオフィスでの撮影が行われていた。本番が始まる直前に、控え室とスタジオをつなぐ廊下で中島が出番を待っていたが、そのとき、スーツ姿でチョコのお菓子をつまんでいるほほえましい姿を偶然にも発見。だが、リハーサルが始まると、すぐに役者の顔に切り替わる。最初は動作の確認をしたり監督からの指示を受けて、ひとつひとつ応えていた中島だったが、本番では表情や動きがより生き生きとしていた。

 撮影前にたたずんでいた中島の姿は、どこかの新入社員がスタジオに紛れ込んだかのようだったが、セットのデスクにつき、椅子を移動させて共演者と話しているときは、ここはどこか実在するオフィスなのでは?と思えてくるほどだった。実際、セットはエレベーターホールまで続く本格的なもので、オフィスに置いてある事務用品や本ひとつをとってもリアルなため、中島がデスクに置いてある備品に興味を示す場面もあった。

 撮影の合間には、課長役の遠藤憲一や主任役の山内圭哉に、その日出てきた「OJT研修」というセリフの「OJTとは何の略か」というクイズを出していた中島。すると「OはおおまかのO?」といった冗談が飛び交い、中島も「おおまかじゃないですよ!」と楽しそうに切り返す。また、中島のセリフ覚えは完璧だそうで、遠藤が「何度、中島くんにセリフを教えてもらったか」と感心している姿も見られた。

 今回、忙しいドラマ撮影の間に小誌のインタビューや撮影の時間をいただいたのだが、セットの裏側やライトのすき間など、予想外の場所で行われる写真撮影に「えっ、ここで?」と戸惑いつつも、次々とポーズを決めてくれた中島。リハーサル中にも小誌のカメラマンにさりげなく目線をくれる優しい気配りもあった。本番が終わると、俳優やスタッフ全員が、大きなモニターで演技や音をチェックする。中島は、モニターの真ん前に位置取り、キラキラしたまなざしで映像をチェックしていた。しかも、無意識なのか、小道具のカバンを持ったままモニターに見入っている姿がほほえましく、一ノ瀬のキャラクターに重なって見えた。

 その後は、社会人として右も左も分からなかった一ノ瀬が、課長の指示がなくとも、進んで仕事をしていることで、課長に“ドヤ顔”を見せるというシーンの撮影が行われた。そのうれしそうな“ドヤ顔”を見た課長は、一ノ瀬の成長に気づいて思わず笑みを浮かべてしまい、そんな自分に対し、ちょっと照れているようにも見えたが、実際に撮影現場で中島の無邪気な“ドヤ顔”を見ていると、取材をしている小誌スタッフまでもが、ふっと笑顔になっているのに気づいた。

 原作の韓国ドラマはシリアスさもあるが、日本版は韓国版をリスペクトしながらも、独自の明るい空気が加えられている。撮影中の中島の表情からも、タイトルの通り、HOPE=希望が感じられた。撮影の合間のわずかな時間、中島が小誌だけにインタビューに応じてくれた。

 

撮影現場での演技を見たら、表情がすごく豊かでした。

「表情だけが重要というわけではないのですが、リアクションが予定調和にならず、誰かが言ったことに対してちゃんと聞いている感じが出ればと思って、表情で変化をつけたいなと思ったんです」

ほかに演技において重要だと思う部分はどこですか?

「今回の役でいうと、最初の段階では何でも知りすぎないことですね。話が進むごとに、いろんなことを覚えていくという役ですから、最終話に近づくにつれて、貿易用語など意味を調べていこうと思っています。こういうことは、はっきり表の演技に出る部分ではないけれど、違いは表れると思うので、心がけています」

中島さんが演じる一ノ瀬歩を、どういうキャラクターと捉えていますか?

「一ノ瀬はいい人ですし、だからこそ不器用だし、世渡り上手ではないんですけど、周囲の人たちが一ノ瀬の行動をきっかけに、いろんなことに気づかされたりするし、良い意味で人に影響を与える人物だと思います。でも、媚びているところはないので、自然にそういう雰囲気がにじみ出るような芝居をしたいなと思いますね。一ノ瀬に、どれだけ近づけるかっていうことをいつも考えています」

撮影中の雰囲気もよかったですけど、遠藤さんにアドバイスをもらったりとかはありますか?

「遠藤さんは、『前のシーンでこういう言葉が出てきたから、つながるようにしたほうがいいんじゃない?』とか、一緒に考えるきっかけをくれますね。『そんな細かいところまで考えていなかったな』と気づかされることが多いです」

今までに撮影した中で、印象に残ったシーンはありますか?

「社会人になるということで母親からスーツを買ってもらうシーンでは、いつも母親にキツくあたっているのに、それでも歩の背中を押してくれているんだなと思えてぐっときました。桐山くん演じる人見と社内プレゼンをする場面もよかったです。一ノ瀬の一生懸命さが見えるシーンになっていると思います」

桐山さんとはお芝居の合間にどんなふうに過ごしていますか?

「今回初共演なんですけど、ジュニア時代から面識もあってすぐに打ち解けたし、撮影の合間にも、ここはこうしたらいいんじゃないかっていうことを話し合っているし、ふたりで一緒にものづくりをしている感覚があります」

このドラマは韓国ドラマのリメイクですが、そこは意識しましたか?

「『ミセンー未生ー』の全20話を見た後に『HOPE~』の台本をもらったので、最初は台本を読んでいても、韓国版の俳優さんの顔が頭の中に浮かんでしまったんですよ。そこから自分たちのお芝居に変えていくのが大変でした。『HOPE~』は、『ミセン~』の良いところを選りすぐったものになると思います。ただ、韓国と日本での就職に関しての背景も違うと思うので、プロデューサーさんと話し合って、もうちょっと明るい一ノ瀬を演じていいのかなということになりました」

スーツを着たサラリーマンを演じてみて、実際のサラリーマンの方に共感できる部分を感じましたか?

「サラリーマンの方って、スーツを着て電車に揺られて会社に来て、そこから“本番”が始まるじゃないですか。電話対応したり、メールチェックしたり、会議の準備をしたり。今回サラリーマンを演じて、街を歩くサラリーマンの方が、かっこよく見えてきました。このドラマには、働いている人なら誰もが共感できるセリフもあるので、見てくださった方が、身近な人、例えばお父さんとかを尊敬できるようになったり、働いている自分を認められるようになったりできる作品になるのではないかと思います」

 

 

 

person vol.47