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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

必死で掴めば何かが変わる

 14年、韓国で数々の賞を総ナメにして、日本でも放送されるやいなや、空前のヒットとなったドラマ「ミセンー未生ー」。その日本版がこの夏始まる、中島裕翔主演のドラマ「HOPE~期待ゼロの新入社員~」だ。主人公は囲碁一筋に生きてきた他に取り柄がない22歳の一ノ瀬歩。彼は囲碁の道を諦め、母に紹介された総合商社の最終採用試験へ。その内容は1カ月間のインターンシップとして働くことだった…。

 韓流ドラマの王道と言われる恋愛要素を排し、失敗を重ねながらも、初めて社会と向き合う一ノ瀬。学歴社会や人間関係などの葛藤に悩む彼の姿を克明に描く本作は、不条理な社会で、徐々にたくましさを見せる主人公を描いていく。中島はその役にどうアプローチしているのか、話を聞いた。

 

最初に出演のオファーがあった時の思いを教えてください。

「どの作品でもオファーをいただくのは、すごく嬉しいですよね。今回はサラリーマン役ということで初めてではないのですが、がっつり商社自体が舞台になるものなので、新鮮な気持ちで演じています。今回、社会経験の全くない青年が、社会に出て、必死にひたすら闘い抜くという作品なので、そのプレッシャーも大きかったですね。実際、原作のドラマ『ミセン』もハマって観ていたので、そのプレッシャーもありました」

原作をご覧になって、どんなところに魅力を感じましたか。

「主役のチャン・グレを中心にしながらも、他の人たちにフォーカスが合っていくことです。主人公だけではなく、ちゃんと周りの人間のバックボーンも描かれていて。そのリアルなサラリーマンの世界を描いていることにも惹かれました。あと、作中に出てくるキーワードの『共同作業』という言葉も、群像劇を描くうえでぴったり合っていると思いました。つまり“仕事は一人でやるものではない”というメッセージ性が作品にあって、そこに惹かれましたね」

現場も始まっているということですが、どのような雰囲気で進んでいますか。

「まだ序盤ですが、撮影を続けることによって一歩ずつ主人公の歩に近づけていったらいいなと思っています。まず、この作品は一つの社会を描いているわけで、視聴者の方に寄り添いながら、必死にやることに関しては僕も主人公と同じスタンスだよなと思ったんです。とはいえ、野望のように“原作を超える作品を!”とは思っていなくて(笑)。ただ、ひたすら必死にやれば、日本版なりの良さが自然に出るんじゃないのかなと思っています」

実際に演じられて難しいなと感じられたところはどういった部分ですか。

「やっぱり商社ならではの専門用語です。そういうセリフの難しさは感じています。あと、最初に『ミセン』を全部観て、今回の台本を読んだら、原作のキャストが喋っているようにしか想像できなくて、かなり引きずり込まれてしまったんです。なので、いまは原作も尊重しながら、『HOPE』のオリジナリティを出していきたいと思っています。現場では、原作を自分たちらしくどう変えていくか、制作側や僕らの熱い思いで臨んでいます」

原作でもまるで、自分がいち社員になったかのようなリアルな作りですよね。一ノ瀬歩に関しては、どんな人物だと思われていますか。

「彼は22歳まで囲碁しかやっていない男。だけど、いまは夢を諦め、社会人として生きるために会社で奮闘し、新しい夢を見つけていくわけです。ただ、歩は家庭事情もいろいろと複雑な人物なので、シーンによってどこまで暗くして、どこまで明るさを出せばいいのか、そのバランスが意外に難しいポイントです」

原作では、失敗して落ち込み、ギリギリのところでなんとか再起をはかる主人公が描かれていきますね。そのモチベーションはどこから生まれていると思いますか。

「…難しいですね。実際、彼は後ろ向きな気持ちのほうが強いですし(笑)。ただ、そのモチベーションの一歩目は母親からのものだと思うんです。母親が自分の知らないところで、後押ししてくれていたことに気付いて、その思いを受け止め、背負って歩いていこうとする。その後は、家族以外の誰か、つまり会社の仲間たちと一緒に仕事をしていくことが彼の目標になっていく。多分、そうした過程で歩は働く楽しさに気付いていくんだと思います」

ずっと囲碁の世界で生きてきた男というところも彼の中で大きい要素ですよね。

「そうですね。今まで囲碁の世界、一対一の世界で戦ってきた彼は勝っても自分の力、負けても自分の責任の中で生きてきたんです。でも、そういう分かりやすい勝負の世界の垣根を越えて、人と接して、人との共同作業を学び、人と一緒に成功した時の嬉しさを感じていく。だから、母親の思いや周囲の思いが彼の中のモチベーションになっているのかなと思うんです」

ところで、中島さんはモチベーションを維持するためにされていることは?

「やっぱり、好きな音楽を聴くことですかね。そういうことでリフレッシュするのは大事かなと思っています」

本作をどのような作品にしていきたいと思われていますか。

「日曜日の21時の枠でドラマをやらせていただくにあたって、楽しく月曜を迎えられるものを作りたいと思っています。なので、単純に“明日からまた会社で頑張るぞ!”というふうに思ってもらえるものを目指したいんです。実際、働くどの職種でも共感できる部分が多い作品だと思うので、観てくださる方に寄り添いながら、共感できて、働く方を応援できるような作品にできればと思っています」

 

J Movie Magazine 2016 vol.13