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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

アイドルだけでは生き残っていけない

『HOPE~期待ゼロの新入社員~』は、韓国で大ヒットした連続ドラマ『ミセン―未生―』のリメイクだそうですが、オファーが来たとき、どんなことを思いましたか?

リメイクの作品に出るのが初めてだったので、どういうふうになるのか気になりました。『ミセン―未生―』の面白さを尊重しつつも、日本ならではの個性が出ればいいですよね。総合商社が舞台なのですが、テーマとしてはすごく真面目。現代社会で起きているいろんな問題がリアルに描かれているので、緊張感がありつつ、このシーンはどうなるんだろうっていう楽しみもあります。こういうドラマこそが面白いんだっていう、スタッフさんの熱が伝わってくるんです。

中島さん演じる主人公の一ノ瀬歩は、囲碁のプロ棋士になる夢を絶たれて、コネで総合商社のインターンとして働き始めますよね。中島さんはこれまでもスーツを着た、いわゆるサラリーマンの役を演じていますが、今回はどの辺に興味を持ちましたか?

仕事をするうえで何を大切にするかってことですね。たとえば取引先と揉めてしまった場合、自分を守ることを優先するのか、それとも会社同士の関係を考えたうえでうまくやろうとするのかは、人によって違います。どの会社もそうだと思うのですが、そういう厳しい場所で生き残っていくのは大変だと思うし、取引先だけでなく、上司とうまくいかなかったり、仲間と溝ができてしまったり、人間関係のなかで起きる問題に共感しました。こんなにやったのに報われないって感じることもあるかもしれないけれど、腐らずに頑張っていれば、絶対に誰か見てくれるし、評価してくれる人が必ずいると思うんです。この主人公も「期待ゼロの新入社員」ですけど、大きな挫折から一歩ずつ立ち直って、ひたむきに頑張って、働くことの楽しさや仲間といることの大切さを学んでいくんです。

本当に最初は「期待ゼロ」で、見ている側がつらくなるほどですよね。

そうですよねえ。亡くなったお父さんのボロボロのスーツを着てる設定なんですけど、僕も精神的に結構来ますね、あれは。「おはようございます!」ってボロボロのスーツで現場に入っていくわけですから(笑)。でも形から入るというか、衣装に気持ちの部分を助けてもらえるところもあるので、そういう意味ではありがたいですけどね。

主人公と似ていると思うところはありますか。

「また次に失敗することが怖かったんだ」っていうモノローグがあるんですけど、何かにチャレンジすることは怖いし、失敗してしまうのはもっと怖い。僕は「周りにどう見られているんだろう」とか、「誰かと比べられているんだろうな」って体面を気にしてしまうことが多いので、そこが似ているかもしれません。

やはりお仕事柄、気になってしまうのでしょうか。

そうなんでしょうね。お芝居のときも、監督のイメージとあまりにずれていたら軌道修正していただけるんですけど、「こいつ、なんでわかんないんだろうって思われていないかな」とか、いろいろ深読みしちゃうんですよ。そういうところはもともとあるんですけど、前より周りが見えるようになって、より強くなってきた気がします。似ているといえば、一ノ瀬は勝手に商社に入れられちゃうんですけど、僕もジャニーズに勝手に入れられたんです(笑)。知らないうちに親が履歴書を送っていて、「あんた今日、ここに行ってきなさい!」って言われて。そしたら男の子がたくさんいて、「なにここ?」って感じでした(笑)。

でもこの世界に入るのは、嫌ではなかった?

あのとき勝手に入れてくれなかったら、今の自分はたぶんいなかったと思いますしね。物語だけじゃなく、現実の世の中も何が正解で何が不正解かなんてわからないから、その人が今、幸せだったらいいんじゃないかなって思うんですよね。

プロ棋士になることだけを目指してきた一ノ瀬は、22歳にして大きな挫折をしてしまいますが、中島さん自身はこれまで挫折を味わったことはありますか?

挫折とまではいかないけど、悩んだ時期はあります。高校では芸能コースに入っていたので、僕と同じような仕事をしている人もいたし、クラスメートにメンバーがいたので、いろいろ考えちゃったりして……。1年生のときは皆勤賞をとったので(笑)。

芸能活動という意味では、それはちょっと複雑ですよね。

複雑でしたね。でも今思えば、ちゃんと学校に通わせてくれていたんだなっていう事務所への感謝の気持ちもあります。だけど、その最中は何もやる気がなくなってしまったりもして……。

どうやって乗り越えたのでしょう。

時間、ですかね。あとはメンバーのなかでのポジションが見つかったというか、そのときは自分的にもかなり深刻でしたが、悩むことも大事ですよね。

ちなみにご自身では、どういうポジションだと認識しているのですか?

自分が大事なことをしゃべったりするのは苦手なので、ほかの人をサポートするような役回りでいたいなとは思ってます。バラエティだったら、ツッコんだりして。ジャニーズでは高身長なほうなので、立ち位置的にも端に追いやられることが多いですし(笑)。

もっと前に出たいと思ったりはしないんですか?

どこが「前」なのかは、自分が決めることだから。もちろん知名度はこの世界につきものだけど、それだけにこだわってしまったらいやらしいというか、気持ち悪さを感じると思うんですよね。

アイドル以外に役者としての顔ができたことについては、どんなふうに思っていますか。

アイドルは特に、それひとつだけでは生き残っていけないんですよね。実際、いろんなことをやっている人がたくさんいるじゃないですか。たとえばジャニーズWESTはコンサートでコントなんかもやるし、櫻井くんはキャスターの道を切り開いたし、シゲくんは小説家としても活躍している。そういうのを見ると、すごくかっこいいんですよね。

アイドル的なイメージを裏切るような役は、むしろ歓迎ですか?

そうですね。脇役をやりたいんです。こうやって主役を張らせていただくのは、とんでもなくありがたいことなんですけど。主役も脇役もできる役者になれたらいいですね。

俳優のお仕事が多くなって、アイドルとのバランスに悩むことはありませんか?

一時期、本当の僕はどれなんだろうって思ったことはあります。それこそ、かっこつけてる自分がいたり、アイドル誌でニッコニコでポーズをとっている自分もいたりして(笑)。『ピンクとグレー』でご一緒させてもらった行定監督に、「常に演じてるよね」と言われて、無意識だったのでちょっと怖かったけど、もしかしたらそうなのかもしれないって思ったんです。だけど役者一筋でやられている方と変わらないスタンスで、お芝居をしたいとは強く思います。

そういう方たちのなかに入っていくのは、気後れするものですか?

申し訳ないっていう気持ちはあります。お邪魔しているという意識がありながら、それでも戦って成果を残さなければいけないので、複雑ですよね。

5年後、こうなっていたいというイメージはありますか。

舞台とかにもチャレンジしたいです。なんかもっと怒られたいというか……。

怒られたい!?

僕らの世代って、環境的に上の世代に対する憧れがあるんです。「昔はもっと厳しかったんだよ」などと言われますけど、たしかに京都の太秦とかに行っても、今は職人のみなさんもすごく優しいですし。理不尽な厳しさのなかで揉まれてみたいって思ったりもするんですよね。

逆境に強いタイプなんですか?

いや、全然強くないです(笑)。すぐめげるし、すぐ自分を甘やかしちゃうので、だからこそ打たれ強くなりたいんです。

 

 

パピルス vol.67