思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

DVD&ブルーレイでーた Yukisada × Nakajima

行定勲 × 中島裕翔
「ピンクとグレー」

人気スターという自身とも重なる役で映画初主演を飾った中島裕翔。彼の俳優としてのポテンシャルを高く評価し、その癖までいかしつつ行定監督がつくり上げた、新たな青春映画───その”秘密”を覗いてみる。

 

 加藤シゲアキの原作が読み手の想像を超える一篇だったように、行定勲監督による映画版も、思わず膝を打つ展開が待っている。果たして、宣伝コピーにもある“幕開けから62分後の衝撃”に至る着想はいかにして得られたのか?

まずはストレートな議題を、行定監督と中島裕翔に振ってみた。

行定 自分が歳を重ねて思春期と遠く離れたことで、青春映画で描かれる若い主人公たちの愚かさみたいなものを肯定できるようになったんです。ならば『ピンクとグレー』の主人公たちも、もっと愚かさやダメな部分が露呈していいんじゃないか…というところから、映画の構造が思い浮かんできて。でも、もっと言うと中島裕翔を主演に迎えると決まったときから、着想のタネはありました。加藤くんの原作は、挫折を味わう河田大貴が主人公なんですけど、僕のイメージする中島裕翔は、やはりスターダムを駆け上がっていく白木蓮吾なんですよね。原作自体もメタ構造的なところがあるし、裕翔が蓮吾を演じるということに加えて、後半にひと捻り加えることで、青春映画の主題たる栄光と挫折を違った視点から描けるんじゃないかな、と思ったわけです。

中島 映画の前半と後半でガラッと変わるという発想は、台本を読んだときからすごくおもしろいなとワクワクしていました。僕がアイドルという前提を踏まえながらも、そこにとらわれない表現に挑戦させてもらえたことで、幅が広がったと言いますか…引き出しがひとつ増えたという感覚です。

 元々、行定監督はいくつかの出演作を見て、役者としての中島を高く評価していた。そのポテンシャルをフルに引き出そうと、同世代の実力派を相手役に起用する。

行定 自分の名前で活動をしているけど、自分自身とは少し異なる偶像に憑依するのがアイドルで、そこに関しては裕翔も極めてプロフェッショナルなんですよ。だから、芝居するときにはその偶像から引き算で演じてもらって。そこに衝動で芝居をする…いわば足し算タイプの菅田将暉をぶつけて、受けて反射させることで、この作品を形にしていこうと考えました。本来、真逆からアプローチする2人を撮るときは、関係性ができていることを前提にするんですけど、裕翔と菅田は初共演ながらアッという間に仲良くなって。付き合ってるのかと疑いたくなるくらいベタベタしていたんですよ(笑)。

中島 将暉は同世代でも力のある役者さんなので、芝居に対する考え方とか聞きたいな───という、ちょっとした下心もあったんですけど(笑)、実際に話してみると、本当に気持ちのいい人なんですね。自然とリラックスできるというか…。それでいて、シーンごとにいろいろなアイデアを出してくる。芝居においては、常に意欲的なんです。だいたいは監督に却下されてしまうんですけど(笑)、それでもチャレンジを続けていく。一緒に芝居ができて、すごく刺激的でしたし、おもしろかったです。

 もちろん、監督&役者として組んだ両者も、大きな手応えを感じていた。演出と芝居が自然に噛み合う心地よさを、互いにこう語る。

行定 本作はある意味、何者でもない人間の話なんですけど、実はそういう役を演じるのが一番難しい。特に後半はいかにして人間としての裕翔自身に近づけていって、リアリティを出すかというのがテーマでした。そのひとつとして、人と話すときに左の首筋を触る彼自身の癖を生かしているんです。前半では指摘して控えてもらったんですけど、ワンシーンだけ前半でも確信犯的に使いました。それが何を意味するのかは、映画を観て確かめていただければと。

中島 そうなんですよ、僕、無意識に首筋を触っちゃうんですよね。監督の観察眼が鋭いのは現場でも感じていて、何か見透かされている感があったんですけど、どこを見ているのかなと思うことが、実は結構ありました(笑)。テイクを重ねる時も「芝居はOKなんだけどね」という言い方をなさるので、「え、何が違うんだろう!?」って。でも、監督は安易に答えを提示しないので、考える必要があったんですけど、その作業は役者としてすごく楽しいものでしたね。

 

ピンクとグレー

 原作はNEWSの加藤シゲアキ。現役のアイドルが芸能界を舞台に著した小説は、話題性ばかりでなく、青春の栄光と挫折をほろ苦く描いたという点でも高評価を得た。その映像化に挑んだのは、『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲。中島裕翔という得がたい素材の旨味を引き出すために、原作とは異なる構造にアレンジして、若さゆえにピュアすぎた魂の痛みをスクリーンに刻み込んだ。その意欲的な手法によって色分けされた物語に、思わず目を見張ることだろう。

 

 

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