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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

J Movie Magazine 2015 vol.06

magazine 中島裕翔 ピンクとグレー

Hey! Say! JUMPの中島裕翔が、映画初出演にして初主演となる『ピンクとグレー』は、芸能界を舞台に、若者たちのほろ苦い友情を描く青春ストーリーだ。人気俳優・白木蓮吾と、売れない俳優・河田大貴の親友二人のすれ違う想いを描いた本作に、中島は体当たりで挑んでいる。映画の前半と後半ではまったく違う存在感を見せ、一本の映画で驚くほどの豹変を見せる中島は、アイドルという肩書きを超えて、日本のエンターテインメントを背負う実力派俳優への道を歩み始めた。公開を控えたいま、その想いに迫る。

 

──河田大貴と白木蓮吾の二人を観て、親友ならではの密度の濃い距離感と、一緒に過ごしてきたんだろうなという長い時間を感じました。とても3週間で撮ったとは思えなかったです。

「ありがとうございます。その3週間は、実はテレビドラマの撮影も重なっていて、ドラマが終わらないうちに『ピンクとグレー』がクランクインしたんです。現場も行ったり来たりで、作品が重なるのも初めてだったのでうまく演じられるかなという不安が最初はあって。だから序盤は芝居の切れが良くなかったりしたので、行定勲監督とお話をしながら、修正するなど、常に必死でした」

──もう、混乱しそうですね。

「たしかに(笑)。毎日が山場だなと思いながら撮影していました」

──本作は、突然謎の死を遂げた親友を通して「自分とは何だろう」と自分を見つめるほろ苦い青春物語でした。役を演じるうえで大事にしていたところはどんなところですか。

「映画の前半はカッコよく、でも何を考えているか分からないというミステリアスさを意識しました。後半は、自分を意識的にボロボロにしていました。荒んだ感じを出したくて、風邪を引くんじゃないかっていうくらいの格好で、髪の毛をボサボサにしたまま現場に入ったり、現場に入っても誰ともしゃべらなかったり。少しわざとらしいかなと思うくらいボロボロにしました」

──衣裳などで気持ちの切り替えもできるんでしょうか。

「そうですね。衣裳は大事だなって常に思います。この現場ではタートルネックを着ると、役になれました」

──たしかに、タートルネックってどこか大人びた感じのアイテムですよね(笑)。

「そうそう。きたきたコレ!っていう感じがします(笑)。蓮吾のいろいろな感情を、タートルネックを着ることで抑えるような感覚もありました」

──映画の前半の中島さんは、今、目の前に居る中島さんよりも大人っぽく感じて、後半の中島さんは幼く感じますね。

「役として、感情を抑える前半と吐き出す後半というのはあったかもしれません。ですが、監督が『前半でも、もっと笑ったり感情を出していいよ』とおっしゃって。だからこそ、蓮吾は怖いなと思いました。クールなのに無邪気なところもあるから、どっちが本当なのか分からない。映画の仕掛け上、役のことを考えだすと、どんどん深みにはまってしまいそうでした」

──でも、中島さんの映画ラストの表情を観て、これが人間なんだなとしみじみ感じました。

「うれしいです。僕も完成した映画を観て、結果的にこういうふうにやって良かったなと思います」

──とくに後半の、中島さんのつぶされそうな感じが観ていてとても苦しかったです。今回の役は、家に帰ってまで引きずったりはしましたか。

「僕は普段からキャラは家まで引きずらないですね。撮影が終わったらもうすぐ『ふぅ~』って抜きたい派なので(笑)。むしろ、現場に入るまでにどうやって役をもっていくかということは常にやっていました」

──それが、先程おっしゃっていたボロボロになって…ということなんですね。

「はい。心境を変化させることで演技が変わるかなと思ったんです。実際に完成した映画を観て、こういうふうにやって良かったなと思いました」

──まったく新しい“役者・中島裕翔”が観られる映画でしたが、この映画で、どのような部分に演じるおもしろさを感じましたか。

「いろんな人との化学反応ですね。相手によって出方や芝居が変わるのがおもしろいなと思いました。それと、初めてのことだらけでそれが面白かったですね」

──激しい殴り合いのシーンやベッドシーンなど、演じるうえでハードルが高いシーンがたくさんありましたね。

「殴り合うシーンは、夜中に大声を出してやっていましたね。すごく寒かったし、自分をコントロールしなくちゃならなかったので大変でした」

──コントロールとは?

「リアルに殴っているように見せるという計算も必要でした。本番前にワ―って叫んで、自分を奮い立たせてからお芝居をはじめたのですが、奮い立たせすぎると、感情を抑えられなくなってうまく殴っているように見えないんです。体の中はすごく燃えているから、その気持ちに翻弄されてしまったりもしました」

──痛みも伝わるシーンでしたね。本作は、初めての思い出がいっぱいですね。

「そうですね。あとは、作中の蓮吾のPV撮影のシーンは、すごく恥ずかしかったのを覚えています」

──PV撮影自体は初めての経験ではないですよね?

「そうなんですけど、撮影のときにみんなが“フゥー!”って異様に盛り上がっているんですよ。夏帆さんも、観るたびにそのシーンで”キャー”って言うから、とても恥ずかしかったんです」

──(笑)。夏帆さん演じるサリーと、菅田さん演じる大貴とのシーンはあったかい空気感が流れていましたね。後半では幼馴染み3人の関係性もガラっと変わりますが、現場はいかがでしたか。

「ずっと和気あいあいとしていました。後半で、将暉が夏帆さんを壁に力強く押し付けるシーンがあるのですが、夏帆さんが本当に押しつぶされそうなくらい激しかったから、『ヤバいねー』と言いながら盛り上がっていました。でもシーンが変わればみんなピリっとして。現場での距離感は近かったですね」

──お二人からは、現場でどんな刺激を受けましたか。

夏帆さんの芝居の変貌が、本読みの段階からすごくて、後半はもう怖いくらいでした。将暉は、毎回違う芝居をしてくるんです。芝居だけじゃなくて普段の距離感も変わるところが面白くて。途中から『まあ、楽しみましょ』ってちょっと偉そうに言ってきて(笑)。意図的に僕をイライラさせているのかなと思いました。現場の雰囲気作りがうまいんですよ」

──ボロボロで孤独の中島さんを見て、ドキュメンタリーっぽかったので、演じているという感じがしなかったです。そして、もしかしたら中島さんも同じような経験があるのかなと思いました。

「一人で沈むときもありますけど、あそこまで暗くはないかな(笑)。ですが今回は、自分なりに最大の要素を出しました。加藤くんが書いた原作小説にも細かいところまで描かれていますが、心の葛藤とか、人のことを分かっているようで分かっていなかったっていうことは、すごく共感できます」

──とくに、芸能界で悩むという点ではいかがですか。

「もちろんあります。Hey! Say! JUMPは9人いるので、その中でどうやって存在感を出していけるのかという葛藤から、これからどうやっていこうとか。アイドルだけやっているのは普通だから、その中で自分ができることを見つけるという作業をしようと思ったんです。何かを武器にしなくちゃいけないって」

──お芝居もドラムもそのひとつですか。

「そうですね。自分にしかできないことをって常に考えていて。その当時から、メンバーの山田がバリバリ主演でドラマをしていたのですが、僕が彼と同じことができるかっていったら出来ないから。それで吹っ切れました」

──吹っ切れた直接のきっかけは何だったのでしょうか。

「昔、事務所の社長に言われたんです、『どんなときもくさっちゃダメ』って。ふと、その言葉を思い出したんです。僕には向いていないなって思うことがあったとしたら、向いているものを探そうっていう考え方になれたんです。周りと比べようと思わなくなったというか。

 この映画でも、最後には大貴が吹っ切れて、蓮吾の持っていたデュポンのライターを川に投げるんですけど、そういう瞬間って、やっぱり現実にもあるんですよね。ふさぎ込んでいても、悩んでいても、いつか“しょうもない”って思うときがくるんですよね」

──その、中島さんの他の人にないとりえとは?

「……長身」

──(笑)。

「“しょうもない”ですね(笑)。まだ見いだせてないかもしれないけれど、こういうお芝居の仕事をいただくことが最近多くなってきて、それがとてもうれしいですし、アイドルっぽくない役者という目標がうっすら見えてきたんです。たとえば岡田くんみたいな」

──では、ゆくゆくは大河ドラマにも出てみたり。

「お話をいただけるなら本当にありがたいなと思いますね。この間、ドラマでご一緒した長谷川さんにも『大河はやったほうがいい』と言われました。今はまだまだ、もっといろんなことを経験して芝居の糧にしていこうと思っています」

──映画にも出てきた「自分のやりたいことじゃなくて、自分のできることをやろう」っていうセリフにも通じますね。

「このセリフのように、できることをやるだけですよね。その経験値の中で、自分というものが作られるような気がします」

──それにしても、本作の中で本当にいろんなことをやっていますよね。もっといろんな中島さんを観てみたいです。

「ありがとうございます。お芝居に関して、今はどんどん新しいことをやっていきたいです。最近は好青年の役が多いですけど、悪い役もやってみたいですし、不思議な人もやってみたい。きっとそこにも違った楽しさがあるんだろうなと思います。そうやって、自分の中の可能性をもっと広げていきたいと思います」

 

 

J Movie Magazine 2015 vol.06