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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

BARFOUT!  JANUARY 2016

しがみついて生きていた人なんだなと思うと
すごく人間として弱いしブレやすいけど、
そこにとても人間味を感じます

 

 アイドルであり役者であり、22歳のただの青年でもある。中島裕翔が演じたことで、役の重みは深まっていった。スターでいる一方で抱えている、ドロっとした暗部───華やかな業界を生き抜く優越感、他者への嫉妬、特別な遊び、重圧による気狂い、輝かしかった思春期への憧憬───そういった様々な局面を迎えるごとに、中島の表情が生々しく映るのだ。「リアルさを意識したというのはあります」と話してくれたが、アイドルである自身がそれを生々しく演じるということに、どれだけ魂をすり減らして挑んだのだろうかと思う。これまでの出演作を観ていると、自身を晒すのではなく、もっとあざとく芝居をすることも、作りこんで技巧的にできたのではないかな?とも。でも中島は、作品の中に身を投じて、生き切ることを選んだようで。笑顔も、情けなさも、狂気も、何にも嘘がないように映った。映画『ピンクとグレー』は中島の事務所の先輩・NEWSの加藤シゲアキの小説が原作で、舞台は芸能界。白木蓮吾(ごっち)(中島)と同じ団地に引っ越してきた同級生の河田大貴(りばちゃん)(菅田将暉)は共に成長し、幼馴染のサリー(夏帆)に恋心を抱く思春期を過ごす中、渋谷で読者モデルにスカウトされて芸能界へと足を踏み入れる。参加したある撮影がきっかけでごっちは注目され、一気にスターダムへと駆け上がる。が、対照的にエキストラから抜け出せないりばちゃん。差が開いていく2人の心は乖離し、ささいな喧嘩で絶交する。5年の年月が流れ、同窓会で再開した2人は和解するが、一夜明けてりばちゃんがごっちの部屋で見たのは、彼の亡骸であった。

 取材日、現場に現れた中島はフラットな様子で、会話の受け答えもとても自然体な印象だったが時折、強い意志のある言葉を口にしていた。男気のある人柄を感じたし、人を惹き付けるえもいわれぬ色気があった。当たり前のことだが改めて、この人が生きた映画だったのだなと、はっとした思いだった。

 

サボテンに癒やされるくらいの精神状況ではありました(笑)

中島 この作品を、現役のアイドルであるNEWSの加藤シゲアキ君が書いたということが、まずすごいですよね。アイドルが、ここまでリアルに芸能界と一般の生活との境目を、上手く描けるものなんだ、と。小説から削られている部分はありますけど、映画用に大胆にアレンジされて分かりやすくなっている部分もあるので、既に小説を読んだ方も楽しめるような仕掛けになっています。

バァフ 原作はいつ読まれたんですか?

中島 去年ですね。もともと母親が読んでいて勧められていたのですが、ドラマ『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』の番組宣伝をしていた時に、自分的にあまり上手くいかなかったことがあって。「これはやっちまったな」と思っていたら、当時のチーフ・マネージャーからこの『ピンクとグレー』を渡されて。「もしかしてこの間の番宣、やっぱり駄目だったのかな……」とか深読みして、感想文を書かされるのかな?と思っていたんですよ(笑)。でも読んだ後も何事もなく、普通に過ごしていたら、映像化になると言われてびっくりしました。

バァフ なるほど。現場に入ってから、行定勲監督とはどんなお話をしましたか?

中島 作品のテーマとか……あとごっちに関してはあえて、誰もが持っているような感情はちゃんと晒そう、という話はしました。それを見せていくことによって、より人間っぽく、愛せるキャラクターにしていきたいなと思ったので。基本的には、僕からの質問攻めでしたね。あんまり監督は色々と言う方ではなかったので、すごく不安になっちゃって、役について聞きまくっていました。僕は分からないことは素直に聞くタイプなので。

バァフ 行定監督も、中島さんについて「素直に色々と聞いてくれて可愛い」と言っていました(次号、行定監督と小川真司プロデューサーの対談を掲載)。返ってきた答えで、意外だったことはありました?

中島 ごっちはクールな人柄で、あんまり笑わないのかなと思っていたんですけど、「いや、素直に笑っちゃっていいよ」と言われたのが印象的で、それは大きかったですね。普通の感覚も持ち合わせながら演じていいんだと、そこで気付けたというか。ごっちとりばちゃんの関係性も、わりとあり得る話だと思うので、監督に相談しながら「どうやったらリアルに見えるかな?」と模索してやっていきました。2人の関係以外の部分でも、この作品はリアルさを意識したというのはあります。僕も実際に芸能界にいるわけですし。

バァフ 実際にジャニーズ事務所のみなさんは、ジャニーズJr.を経てステップアップしていきますけど、先に仲間がデビューしたり、焦りとか葛藤というのはあるものですか?

中島 自分で言うのもアレですけど、Jr.の頃の僕は結構エリートだったので、焦りはなかったんです(笑)。その頃はいい意味で、本当に楽しくやっていただけだったので。ただ、それが全然自分の力じゃなかったということに、後で気付くんです。たぶん、焦りや葛藤を僕に対して持っていた人もいると思うし、分かります。そういう気持ちになることはあるし、リアルに出てくる世界だから怖いなとも思うけど。共感できるようになったのは、周りが見えるようになってきてくらいからじゃないですかね。

バァフ いつ頃から周りが見られるように?

中島 ちっちゃい頃から意外と周りを見ていたんだなと気付くこともあるけど、それとは違う意味で、大人になるにつれていろんなことが分かってきて。周りがしっかり見られるようになったのは……客観的に見られるようになったのは、中学校から高校生ぐらいの間じゃないかと思います。

バァフ 早いですね。

中島 そうですかね。でも、その頃から「大人っぽいよね」と言われ始めて、今ではもう「絶対、平成生まれじゃないだろ」と言われることも多くなってきて、困っています(笑)。

バァフ (笑)お話を伺っていると責任感が強い一方で、わりと失敗した時に引きずる方なのかな?と。

中島 引きずりますね(笑)。

バァフ 今回の役は感情の起伏の強いシーンが多いじゃないですか。そうすると、より自分を晒さないとできない場面もあると思いますし、撮影によっては落ち込んだ日なんかもありましたか?

中島 クランクインした次の日かな、もうね、誰ともしゃべらなかったです。ずっと1人で抱え込んで。最初っから後半の重いシーンの撮影で、それでできたらカッコ良かったんですけど、自分の中ではちゃんとできなかったなっていう思いが残って。だから試写で完成を観ても、そのシーン付近になってくると、「ふぅー」と気持ちが重たくなる感じです。でも、自分の演技だからちゃんと見て確認しなきゃっていう、複雑な心境でしたね(笑)。

バァフ そういう気分の時って、フラットな状態に戻すために、何かされるんですか?

中島 あの時はどうしてたかな……サボテンに、話し掛けるまではいかないですけど(笑)、眺めていましたね。家にちっちゃくて可愛いサボテンがあるんですけど、植物に癒やされるくらいの精神状況ではありました(笑)。

 

「そんなもんなんだよな、人間って意外と」って

バァフ 今作は前半と後半で世界観が変わる構成で、その難しさもあったと思うのですが、どういった点を気にして演じましたか?

中島 うーん……どうやったらこの世界観の違いが出るか?ということですね。まるっきり変えるのかどうか……脚本を読んでいても、原作を読んだ僕でもびっくりする瞬間があるんですけど、そこから世界が変わるというか、まるで違う作品を撮っているように自分でも分けていました。でも、自分の中で区切りを付けたことで、2つの世界を対比できるようになって、わりと迷いがなく演じられたと思います。

バァフ スターである白木蓮吾というキャラクターについては、原作から引き出したイメージが、演じる上でありましたか?というのも、原作を読んで思っていた人物像より、映画ではチャーミングな人間味を感じられたので、中島さんは白木蓮吾のどういうところが魅力で人を惹き付けて、芸能界で活躍できる人間だと思われたのかな?と気になって。

中島 原作を読んで、クールで何を考えているのか分からないような魅力のある人だと感じたんです。彼からしたら徐々に準備をしていたのかもしれないけど、急に芸能界で活躍できてしまうし。そういう不思議な佇まいみたいなものは、意識したかな……でも、元々才能はあったんでしょうね。だから急に突拍子もないことをしたり、そういうことをできる度胸があって。だけどそれは、自分の意思のようでもあり、実は他の人から受けた影響もすごくあったと思うから、そのミステリアスな感じが魅力の1つではあると思います。

バァフ ミステリアスで、人を見透かすような目線を持つ人ですよね。周りをよく見て分析しているから「りばちゃんは生きたい人」だと、芸術や芸能の世界に身を捧げるより、生きることを選ぶと言える。その台詞も印象的で。

中島 でもね、白木蓮吾に対して「結局何者でもなかった」というりばちゃんの台詞もあって、僕もそう思うんですよ。白木蓮吾に対しての劣等感で終わるわけではなくて、吹っ切れて自分のことも肯定できたんですよね。りばちゃんは生きたい人だし、しがみついて生きていた人なんだなと思うとすごく人間として弱いしブレやすいけど、そこにとても人間味を感じます。意外と好きなんですよね、こういうりばちゃんの部分。「そんなもんなんだよな、人間って意外と」って。アイドルもそうですけど、存在が大きくなるほど周りも乗っかってくるし、伝説化しているものって周りの影響が大きいと思うので、そういう虚像を追うだけでなく「自分は自分でいいんだ」と思えたことに、僕も共感したんですよね。

 

 

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