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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

+act 201601 suda

magazine ピンクとグレー

菅田将暉が行定組に初参加。そう聞いて、期待しないでいられるはずがない。今年は遂に全国区のCMに出演、芝居に興味の薄い視聴者層にも強烈なインパクトを残し、映像作品としても、主演作『明烏』を始め、かなりの吸引力をもった役どころ多数。前クールの主演ドラマ『民王』でも高い評価を獲得し、確かな足跡を残した1年。2016年は、映画『ピンクとグレー』の公開でスタートを切るが、この菅田がまた、恐ろしく素晴らしい。

 

前身白の衣裳に鮮やかなピンクの髪。ピンスポットのみのシンプルなライティングに、とにかく映える。強烈に絵になる。この衣裳は、今回の小誌撮影テーマとカメラセッティングを聞き、「ラフな感じの白、どうですか?」と自ら提案してくれたもの。カメラの前に立ち、「“面白い”写真にしたいですよね。変な写真のほうが僕の“黒い”影の部分が出ますよ、きっと(笑)。」そうつぶやき、まさに“ふさわしい”ポージング、表情を次々と繰り出す。いつも言っていることだが、彼の撮影は本当にクリエイティブで面白い。毎回、その面白さは更新され、役者としての充実度に比例して、驚くような進化を続けている。今回は映画『セトウツミ』のクランクアップの直後、『暗殺教室~卒業編~』にインしたばかりのタイミングで行なわれた取材。出演作が目白押しの2016年、そのオープニングを飾る菅田の最新作『ピンクとグレー』についてはもちろん、今最も映像に愛されている役者・菅田将暉の今、そして2015年を総括してもらった。

 

──『ピンクとグレー』を拝見しました。ネタバレは出来ないですけども…今作は、かなりやり甲斐のある役どころだったんじゃないですか。

「そうですね。面白かったです、非常に」

──まず原作を読んで、脚本を読んで、どう思ったのか?

「原作はちらっと読んだだけなので、台本を読んでみて…やっぱり、台本上だとわかりづらいんですね。でも多分、それがこの映画のよさで。しかも映画になってみると、わかりやすくなっていて、そこは行定さんがちょっとそういう風に寄せたんだと思うんですけど、それも一種の狙いで。やっぱり、難しいじゃないですか、映画って。”わかる人だけにわかればいい”というのもひとつの芸術だけど、伝わらないと意味がないし。芸能界の話で、芸能界ってやっぱり…まさにそういう世界で。僕、この映画をやっていて面白いなと思ったのが…非現実(の世界、描写)のほうが感情が伝わってきて、現実世界のほうは凄くフラットというか。なんか感情のない冷たい感じがして」

──あぁ…なるほど。確かに。

「それってとても悲しいけど、凄く人間的だし、芸能界って感じがするなぁという感じがしました」

──上手くいかない、売れない役者さんの役(今作の河田大貴)というのは、何かイメージ、プランが?

「いっぱいありましたけど……結果、”現場”なんですよね。行定さんは、まず思いっきりバン!とやった一発目がOKだったとしても、まだ続けるんです。それは、もうちゃんとしたものは撮れたから、”もっと見たい”というか、どんなバージョンがあります?という“自由タイム”にも近いというか(笑)。一見、現場的には“(淡々と)はい、もう1回”って感じなんですけど、行定さんの感じを見ていると、”もうちょっと見たいから、何かやって”という感じ。そういうことが結構多くて。だから、色んなことをしました。もう思いつく限りのことを。で、特に僕は“ある仕掛け”以前、前半のほうで色々やりましたね。まぁ、そこはあまり言えないんですけど……」

──ある“仕掛け”が大きな転換ポイントとなっているこの映画の造り、構造的に、言えないことも多いですよね。

「そうなんですよね。それも踏まえて、2~3回観てほしいです(笑)。だから…なんでしょう?誰もが持つジェラシーとか、くすぶってる感じで、そのくすぶってる理由も本当は自分でわかってるんですよね。わかってるけど、どこか甘えちゃったり、言い訳をして、だらっと生きちゃってることって、凄くあるじゃないですか。そういう、見ていてちょっとイライラする残念さ、痛さ。”いや、それは…おまえが悪いんやろ”っていう感じと、でもなんか見放せないチャーミングさみたいなものがやれたらなぁと思ってはいました」

──この”仕掛け”についてはどう思われました?

「こんなの…ズルいですよね(笑)。誰が観ても面白いし、そのために行定さんも、”そこ(仕掛け)”の前後で撮り方も変えていますから。本当にわかりやすくベタな“それ以前”と、余計なことをしない、生まれたものだけを撮っていく“それ以降”と、(中島)裕翔以外の僕らは、言わば“色もの”でもあるから。裕翔はほんっと大変だったと思います。初主演映画で、この役は本当に大変だったと思う。だって僕、自分の(主演作)『共喰い』の試写の時とか、もう…涙とまらなかったですもん」

──そうおっしゃってましたね。

「なんてことしてくれたんだ俺!と思ってたけど(笑)」

──自分に(笑)?

「ははは(笑)。裕翔の心の中はわからないけど、でも多分、裕翔にもそういう初主演映画、”映画の真ん中を張る”という不安は凄くあったと思うんです。でも、あのチャーミングさと、ほんとに天使のようなひたむきさというか…俺、裕翔って凄く器用な、なんでも出来る人だなと思うけど、その不器用なところが描かれてるなと思ったんです。”裕翔の”っていうと違うんだけど、そこは見ていて素敵だなと思います。ほんっと、現場で凄く素敵だったので」

──現場で素敵だった。

「はい。がむしゃらで、軽いパニックぐらい取り乱す役じゃないですか。そこは本当に取り乱してたし、それだけ“やろう!”とか”そうならなきゃ”という意思が伝わってきたから。それが凄く嬉しかったです」

──とても真っすぐな気持ちのよさがある方ですよね、育ちのよさというか嫌味のなさというか。

「そうなんです。品があるから、何をしたって絵になるんですよね」

──中島君にも取材させてもらうので、お互いの印象については是非聞いておきたいんですけど…。

「全然、もう…裕翔のことだけで1冊喋れる!ホントに!」

──(笑)是非、語って下さい。

「クリエイティブな物作りのパートナーでいられる気もするし、それでいて、単純に…まず裕翔の凄いな、いいなと思うところが、ああ見えてとても探究心があるというかわりとオタク気質というか。なんと言うのかな?めちゃくちゃ詳しいジャンルのもの、カメラとかギター、ドラムという、極めてるものの“極めレベル”がハンパじゃないんで。で、それは多分、意図的になのかどうなのかわからないけど、あんまり外に出してないことなんだろうなという。あの…ホントに裕翔に撮ってもらった写真で、いつか1冊作ろうと思ってるから。その時はちょっとプラスアクトさんには…」

──(編集担当)はい、是非!協力させて下さい!じゃあ、(小誌でスタートした菅田の)連載と一緒に…。

「はい、一緒に(笑)。あっ、どうでした?あの写真?」

──(編集担当)爆笑しました。連載一発目からこうくるか!?と。

「よかった(笑)。ちなみに、あれを撮ったのが裕翔ですからね。そう…あとは、バンドもね、一緒にやりたいなと思ってるし。ほんと、ドラムのレベルがハンパじゃないから、彼は。でも、そういった極めてるものというのは、彼の好奇心に裏付けされたものなんですよね。そこが裕翔のよさだと思う。ほかのことも話さなくちゃいけないんで今日のところは、この辺にしておきますけど(笑)」

──行定さんもおっしゃっていましたが、お芝居のタイプも「真逆のふたり」だと。

「そうですね。そう…みたいですね」

──そういう違いは、お互いに芝居をしていく中で感じ取ったり。

「もちろん、わかります。だから、僕が劇中(芝居の中で)思っていたことは、どうしようかな?ということで。僕が一発目にドーン!とやるタイプで、その本番一発目にかけるタイプ。で、それがダメだったら、二発目にドーンってやるタイプ。で、裕翔は、だんだんよくなっていくタイプみたいで…。だから、行定さん的に「(ふたりを合わせるのは)難しかった」とおっしゃっていたんですけど。もちろん僕は一発目と同じクオリティーを2でも3でもやっていくつもりではあるんですけど、どうしたってちょっとずつ減っていくんです。それでも、なるべくいつでも裕翔の一番ベストの状態に合わせられるようにやっていこう!ってことをやる。でも、それをやってしまうと、やっぱり1回1回の集中力がかすんでくるんです。だから、もう自分重視で、周りなんて関係ない。一発目に思い切りやって、『さぁ、裕翔こい!』とやるのか。どっちをやるか?を考えた時に、絶対に後者だなと思って。それが多分、裕翔に対する真摯な向き合い方だと思うから。そういう役でもあるし。だからこそ、もう本番中は自己中に、もちろんそれは役の延長線上だけど。だから、変に裕翔を立てたりしないほうがいいんだなって。それで、なあなあになりたくないから」

──変に気を使っても失礼ですよね。

「そうなんです。だから別にこれは上から目線ではなく。シンプルに、ドン!とぶつかり合うことが、裕翔とは出来る気がして。それが“仕掛け以降”に出来たから…」

──“ある仕掛け”以降の菅田さん、素晴らしかったです。

「あぁ、ありがとうございます」

──柳楽優弥さんの存在もまた大きなポイントとなりますが、菅田さん的には、柳楽さんと一緒のシーンはないんですよね。

「そうですね。まぁでも、『ディストラクション・ベイビーズ』ではがっつり一緒にやらせてもらってるんでね。あの人はズルいよ…もう!ほんとズルい(笑)」

──ズルいですねぇ、今作でも(笑)。そしてサリー役の夏帆さんの凄さも感じました。

「素晴らしかったですね。すっごいよかった…みんな素晴らしかったですね。今回」

──『共喰い』の琴子さん=篠原ゆき子さんにも再会されて。

「そう!あれも縁でしたね。ビックリしました。面白いですよね」

──『共喰い』以来ですか?

「何度か、お会いしてますけど、お仕事ではそうです。『共喰い』以来で、嬉しかったです」

──釜山国際映画祭での反応も見たことですし、今作が日本でどう観てもらえるのか楽しみですね。

「ね。ほんと…“何をどう感じるのかは、その人次第”ってよく言うじゃないですか。その典型だと思うなぁ、この作品は。多分行定さん的にも『あっ、君はここまで見えてるんだ?』みたいなタイプだから(笑)。そこが行定さんの上手さですよね。ちゃんとわかりやすいだけじゃないところも、ちょっと余韻を残してるから。色んな幅の人が楽しめるようにしている。俺は、それが凄く裕翔とも合ってる気がする。いい意味で。だって、それだけの幅の広さってなかなか出来ないから。だから、新時代な作品って感じはします。いわゆる、インディーズ、メジャーの、両方のいいとこ取りと言うのかな?という気がします。もうそういう時代になってきているんですよね。本当にそれぞれの面白いと思うものを、色んないやらしい脳を回転させて作っていく。そういう感じだと思うなぁ。もうサブカルがメインカルチャーの時代なので。いかに面白いものが残っていくか?だけだと思う」

──原作の加藤シゲアキさんもすでに映画をご覧になっているそうですね。

「そう。だから、加藤さんがどう思っているのか?知りたいです。一緒に試写を観たんです。釜山に行く前に試写会があって、そこで裕翔と俺と加藤さんで。でもご挨拶だけで、ほとんど僕は会話をしてないので。どう思っているのか?聞いてみたいです」

──現在は、『暗殺教室~卒業編~』で山田涼介さんとご一緒している真っ最中ですね。山田さん、中島さんは同じグループのアイドルとしても活躍されています。そのおふたりと親交を深めている菅田さんから見て、彼らに共通する面白さってなんですか?

「裕翔と涼介ですか?今、僕は涼介と撮影一緒だけど……やっぱり、欲深さじゃないですか」

──いいですね、欲深いって。

「あの人達はちゃんと貪欲ですよ。助兵衛(スケベエ)だもん、ホント」

──これは菅田語ですね。凄い褒め言葉(笑)。

「ほんと、助兵衛だもん(笑)。だから…なんだろう?もちろん、職業としての“アイドル”をちゃんと全うしようという、それも本人達的に好きなことだし、天職だと思うってことなんでしょう。あと、見ていて不快にならないのは凄いですよね。ふたりとも現場で見て思ったのが、この劇中でも裕翔の音楽も交えたPV的な映像があるんですけど、あれを見た時に“うわ、これは自分には出来ない”って思ったんです。やっぱり恥ずかしがらないって凄い能力なんです。それがあるから、ふたりともちゃんと今の仕事を出来る。で、それでいて、いち人間になった時にちゃんと羞恥心はあるから。その矛盾があることは凄いことですよね」

──そこに気づける菅田君が凄いです。わかりやすくて、かつ真理をついている。

「わかりやすかったですか(笑)?だから、そこですよね。羞恥心が欠如してたら、ダメだと思うんです。欠如していてアイドルだと、多分すぐに飽きられちゃうと思うけど、そうじゃないから魅力的なんだと思う。我ながら、いいこと言いましたね(笑)」

──素晴らしいことを指摘してくれました。残念ながらお時間が迫っていますので、今号が今年最後の発売号ということで、この1年を総括したお話も、最後にいいですか?

「あ、そうなんですね」

──素晴らしいといえば、菅田君の2015年も素晴らしい飛躍の年だったなと。『民王』できっちり評価され、結果を残せたっていうのも、凄くこの1年を象徴していると思うし。

「あぁ、『民王』は…そうですね。ありがたかったです」

──『セトウツミ』のクランクアップ写真も拝見したけど、物凄い瀬戸感を出していて驚きました。あれ、凄いです。

「ほんとですか?あぁ~、よかった。そう…そうなんです。今年、すっごい面白かったんですよね。ちゃんと波があったし、闘ったし。それに伴う結果もありがたいことに頂けたし。ホント、凄く面白い1年でした。またそれを超えていかなきゃ。大変ですよ、来年」

──今年の充実感は格別ではないですか?

「そうですね、充実してました!色んな人が少しずつ安心してくれた年でもあったし。そこのラインを1個超えると、本当にひとりの人間になれるというか。今までは、やっぱり“トップコート菅田将暉”とか”箕面出身のあの家の長男”みたいな(笑)。そういうのがあるけど、でもそうなっている内は、やっぱり“独り立ち”じゃないから。その独り立ちに一歩近づいた年だったかな、今年は。やっぱり、親のスネかじっている場合ではないけど、どうしたってスネかじらないといけない時って、まだあるから。それはトップコートもしかり。僕が言うのはあれですけど、その関係として、少しは安心させられたんじゃないかなって。それが個人的に凄く嬉しい1年だったかな」

──俳優として、面白がられているのが伝わってきますよね。色んな作品、スタッフ、役者さん達から、今とても面白がられている。

「嬉しいですね。なんか最近、オファーの内容が毎回面白くて(笑)。本当は喋りたいけど、喋れないことがいっぱいあるんですけど、ほんとに毎回、マネージャーさんがニヤニヤしながら『こんなオファーが来てるよ』って」

──いいですね(笑)。

「ね?昨日も、ね(とマネージャーさんに)?面白い話をしてたんですよね」

──うわ~、聞きたい!auの“鬼ちゃん”も相当インパクトありましたし。

「鬼ちゃん、そうですね。本当にそういうものを、ちゃんと頂けるようになったし、それでいて、もちろんどストレートなものもやらせてもらってるから。なんか本当にバイキングみたいな(笑)。和洋折衷、なんでもある!みたいな…」

──今日の撮影でも、まずこの衣裳を選んでくれたことが面白いし、撮影中も、「黒いところが出る」とか「面白い写真にしたい」とか。

「そうですね(笑)。あっ、だからその方向性がわかった年でもありました。わかったというか、大事なのはその時その時の心情とか体躯とか直感がベストなんだけど、ベースに、どこかファッショナブルじゃなきゃいけないし、同じことを繰り返しても、今は意味がないので」

──ドラマ『ちゃんぽん食べたか』の時に言っていたのが、「今は、肩の力を抜く時期」だと。

「はい」

──そのお芝居のスタンスとしては、どんな風に変わってきていますか?

「今はどうでしょう?結果、『ちゃんぽん~』の時はそうでしたし、それを経て『民王』をやる時に『民王』はそれだけでは乗り切れないなと思いつつ、どうせ力は入ってしまうから。『民王』あたりで一旦それ(そのスタンス)はなくなったんですよね。で、この間、桐谷健太さんと話していたら、やっぱり…僕も薄々とわかってたんですけど『まだ力抜くには早過ぎるよ、おまえ』って言われて(笑)」

──薄々とは思ってたんだ(笑)。

「そう。確かにそうだなというのはあったんですよね(苦笑)。僕もわりと、色んなものを聞いてその場で取り入れていくからそれも縁だと思うし。今はどうなんだろうな?どうやっているんでしょうね。思いついたことは、やる。とりあえず、やってみる。やっていくと、自分の意志も伝わるし、何がしたいのか?が見えてくると、それが間違いでもいいし。だから、間違いが怖くなくなってきているというか、間違いは悪いことじゃないという感じなのかな。だから結果、鬼ちゃんにせよ、あれも結構アドリブがあるしそれを面白がってもらえたんじゃないかと思うし。ちゃんと変えない部分は変えずに、柔軟なところは柔軟にやっていければなと思います」


 +act 201601