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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

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2012年に発表された加藤シゲアキの小説デビュー作『ピンクとグレー』が、『GO』世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督の手により実写映画化。主演を務めるのは、今作が映画初出演にして初主演となる、Hey! Say! JUMPの中島裕翔。この数年、特にドラマ『半沢直樹』以降、役者としてまさに“めきめきと”頭角を表してきた彼が、生々しくリアルな“青春の光と影”“死と喪失感”を全霊で演じ、また新たな境地を見せている。

 

 現役アイドルが芸能界の嘘とリアルを描いた、加藤シゲアキの衝撃の処女作『ピンクとグレー』。映画化にあたり原作を大胆にアレンジした今作には、幕開けから62分後に訪れる“ある仕掛け”が用意されているのだが、その衝撃もさることながら、予告編で観た、吊られたロープの輪に首を通す、空虚な目をした中島の芝居…。あの一瞬の映像で受けた驚きもまた衝撃だった。「毎日が山場のようだった」と振り返っていたが、映画初出演にして初主演作で、ここまで己の深部をさらけ出すような役を引き受けた、その覚悟を感じる芝居。”ある仕掛け”の衝撃とともに、今作で中島裕翔が見せる、役者としての覚悟と覚醒にもまた、映画ファンは衝撃を受けることになるだろう。

──原作は、どのタイミングで読まれていたんですか?

「どのタイミングだったのかなぁ?えっと…ドラマ『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』をやっていた(時期)ぐらいですかね。だから去年の5~6月かな。夏前に読みました」

──それは、今回のお話があって?

「なかったです。なかったけど、読んでいて」

──そうだったんですか。

「その前に、『弱くても~』のドラマの番宣をやっていたころ、自分的に上手くいかなかったなぁと思っていた時があって」

──え…番宣が?ということですか?

「はい。元々書籍自体を自分の母親が読んでいて、勧められていたのですが、自分の番宣で”これは…やっちまったなぁ”と(苦笑)。思っていたら、当時のチーフマネージャーから、実際に『ピンクとグレー』を渡されて。これはもしかして、この間(の番宣が)相当ダメだったのかなって。それともうひとつ、関ジャニ∞さんのバラエティー番組『関ジャニの仕分け∞』でドラム対決があったんですけど、その時も結構失敗しちゃってやばいと思っていたから。もしかしてこれは感想文を書かされるのかなと思っていたんです」

──(笑)それぐらい、小説を渡されたのが突然だった?

「はい(笑)。それで読んで…その後、何事もなく過ごしていたら、映像化されることになって」

──その原作に感じた面白さ。そして、それが脚本となって、読んだ時の面白さは?

「まずひとつには、アイドルであるNEWSの加藤シゲアキ君が書いているということが凄いですよね。最初の作品なのに、小説家のにおいがプンプンするような文体と完成度に驚きましたし、アイドルの人がここまでリアルに芸能界と普通の生活との境目を上手く描くんだという面白さがあって。1回じゃわからない、何回も読みたくなるような本で、それが脚本になって。もちろんカットされている部分もありましたけど、映画用にアレンジされてわかりやすくもなっていました。それでも、僕にとっては少し難しかったですけど、小説とはまた違う描き方が面白かった」

──今作の大きな転機となる“ある仕掛け”についてはどう思われました?

「こういう構成があるんだ!と勉強にもなりましたし、それを効果的に描くために、映画では本当に“衝撃”の造りになっていて。脚本を読んでる時も“あっ、ここから変わっていくんだ”って。だから……僕、三段階ぐらいビックリしているんです(笑)。小説の面白さもそうですし、脚本を読んで“ここから、こうなるんだ!?”という構成も凄かったし、映画で実際に作品となって観た時にも、”うわぁ、こんなに違うんだ!?”って」

──その”仕掛け”の前後、前半と後半で全く違う演技が求められますよね。

「どうやったらその世界観の違いが出るのか?ということですよね。そこから世界が変わるというか。まるで違う作品を撮ってるようだなぁって、現場でも思ってましたけど。でも、衣裳も変わればメイクや髪型も変わるので。”形から入る”じゃないけど、そういう風に全く違うふたつの世界を対比出来るように環境を整えてもらったし、違うものとして見せようと思ってやってました」

──映画初出演、初主演作という意味では、プレッシャーも大きかったのでは?

「よく言われるんですけど、あんまり自分が主役と思わないようにしてるんです。いつも。『水球ヤンキース』の時もそうでしたけど、みんなと同じ目線で一緒に作っていくほうが楽しいし、ひとりだけそんな意識してても、どこか嫌な感じに見られたら嫌だなぁと思って(笑)。もちろん責任感はあるんですけど、でも自分はまだまだ、映画自体も初だし。本当に勉強させてもらうような気持ちでいたので、主演だからこうしよう!みたいなものは、あまり意識しなかったです。周りがみんな凄い人ばかりだし、支えられているという気持ちのほうが大きかったな」

──初めての映画の現場というのは、どうでしたか?

「ドラマは本当に時間のない中、次に追われている中で撮っていて。いい意味で、妥協も出来るんですよ。でも映画は、その1シーン1カットを凄く時間かけて撮れるので…といっても、(今作は)撮影期間的には3週間だったんです。その中で、監督のこだわりもだいぶありましたし、その1シーン、1シーンが重いというか、毎回“山場”の感じで。明日はこのシーンがあるから頑張ろう!って、1回1回、自分にエネルギーを蓄えて挑んだ現場でした」

──中島さんが演じたごっちこと白木蓮吾と表裏一体のような存在の菅田将暉さんが演じたりばちゃんこと河田大貴。ふたりの関係性についてはどのように捉えました?

「わりとありえる話かなと思って見てました。だから、どうやったらリアルに見えるか?というのを模索しながらやってました」

──実際に、ジャニーズ事務所さんでは、Jr.からステップアップしていきますよね。仲間が先にデビューしたり売れていったりっていう焦りや葛藤は、みなさんの中にあるものなんでしょうか。

「自分で言うのも…ですが、Jr.のころは結構、僕はエリートでした(笑)。その時に焦りはなかったのですが、ただ、それは全然自分の力じゃなかったりして。もっとあとになって、色々と気づくんですけど。だからそのころは、ただただ楽しくやっていただけでした。ようやく周りが見えて来て、それからなんじゃないですかね。多分、逆に僕に対して(焦りを)抱いた人もいると思うし、そう考えるとそれがリアルに出てくる世界だから。怖いなとも思うけど、物は捉えようなので、それがお互いが成長出来るような刺激になればいいですよね。だから、そういうのはありえるし、結構共感出来ました」

──いつごろから「周りが見える」ようになったんでしょう。

「いつぐらいだろうなぁ?でも、最初からわりと周りと比べてしまうことが多かったので、小さいころから意外と周りを見てたんだなというのはあります。でもそれとは違う意味で、ちゃんと大人になるにつれて、色んなことがわかってきて。周りをしっかり見て、客観的に見れるようになったのは…、中学から高校の間ぐらいじゃないですかね」

──それって、凄く早くないですか?

「そうなんですかね?でも、そのころからわりと『大人っぽいよね』って言われて。今では『絶対、平成生まれじゃないだろう!』と言われることが多くなって来て困ってます(笑)」

──菅田さんにはどんな印象を持っていましたか?

「なんか奇抜で取っ付きにくい人なのかなと思っていたんですけど(笑)、全然そんなことなくて。普通の感覚を持ちつつも、行動を見ているとたまに不思議だなぁと思ったりとか(笑)。なんといってもかっこいいですよね。服も凄くおしゃれだし。何から何まで自分とはちょっと違うような空気が感じられるので、今も結構仲良くして頂いているんですけど」

──今作で菅田さんに取材させてもらっていますが、「裕翔のことなら、1冊ぶん喋れる!」とおっしゃっていましたよ。

「(嬉しそうに)嘘!?ほんとに?凄いね、言っちゃいましたね(笑)」

──同世代の役者として同じ土俵でガッツリ渡り合って感じた、菅田さんの魅力とは?

「やっぱり場数を踏んでいるのもあるし、慣れているのもそうだし。本当に一緒にやれて嬉しかった。なんだろうなぁ?将暉は、凄く仕掛けてくるんです。”こう来るか!”と驚かされることもたくさんありましたし、凄くやりたいことがいっぱいあるんだなって。僕はわりと安定感を大事にしてきたので(笑)、そう思うと、なんか俺ってつまらないなぁって思ったりもしたし。まぁでも、その対比が出てるからいいとも思うし、同じになる必要は全くないので。また違う現場で、将暉のようなやり方を、自分の中で解釈しながらやっていけたらいいなって。毎シーン違うというか、ちょっとずつ変えてセリフの言い回しひとつとっても驚かされる瞬間がいっぱいありました」

──いい刺激になりましたか。

「はい。やっぱり、色んな表現の仕方を持ってるなぁと思って。全然そういう言い方じゃないようなセリフだったり、パワーで押し切らないところを逆にパワーで押し切ってみたりだとか。凄くショックを受けてるシーンだったのに、グアッ!と急に熱量上げて叫んでみたりする、そういう芝居が出て来るって、ほんとに凄いなぁと思って。同世代なのに凄く勉強になるし、見ていて飽きない、とても楽しい人でした」

──今回、柳楽優弥さんともガッツリ対峙するお芝居がありますね。

「ご一緒したシーンについては、あまり詳しくは話せないんですけど。なんかもうね、”ラスボス”のような…」

──本当に…そのぐらいの存在感を放っていましたね(笑)。

「そう、ちょ~強いんですよ!もうちょっとほかの村で経験値上げてからじゃないと倒せない、みたいな。それが急に来た、”おぉ、えっ…えぇ、不意打ち!?”みたいな感じがね。(柳楽の)登場の仕方、居方が凄いんです。佇まいというか、気迫というかオーラがとんでもなくて。なんなんだ、この人!?と思って。年齢もそこまで変わらないのに、何をしたらこうなるんだろう?と思うんですよね。人とは違った感受性を持った方なんだろうなって。でも、普段はすっごいかわいく笑うんです。子供のように『えへへへ』って。嘘でしょ?そのギャップはなんですか!みたいな(笑)」

──行定監督とも色んなお話をされたそうですが、どんなお話を?

「作品のテーマや、”この人はこんな感じ”という役のイメージですね。敢えて、誰もが持っているような色んな感情を晒す…それを見せていくことによって、より人間っぽく、愛せるキャラクターになるんだっていうことだったり。全然関係ない話もさせてもらいましたけど、基本は『このシーンについて、どういう風に言えばいいですか?』や、順撮りじゃないので、『このシーンの前だから、こういう風にしたほうがいいですか?』とかですかね。とにかく、質問攻めでした(笑)。監督はあまり言って下さらないので、凄く不安になっちゃって。聞きまくっちゃいました」

──直接、監督に聞くタイプなんですね。

「素直に聞いちゃいますね、わからなかったら。自分でも考えてるけど、それが本当に監督が求めているものなのか?一時期、(監督に)聞いて演るなんて、恥ずかしいと思ったこともあったんですけど、自分で作ったものがだいぶ崩れていった現場も多かったので。やっぱり作品をディレクションして、全体を作っていくのは監督の仕事だし。そこで、監督が描いているものの中に、俺らの雑念を入れる訳でもないから。それで、素直に聞きたいなと思うようになりました。特に今回は、監督が僕の癖だったり動きみたいなところまで、凄く観察してくれていて。しかも、それを(劇中で)生かしてくれたんです。そんなことされちゃったら、もう敵わないじゃないですか(苦笑)。だから、敢えて自分で理解しないようにして。いつもはわからない部分があるとすぐ自問自答して、なんでこの時の自分はこうだったんだろうか?何が違うんだろう?って“答え”を見つけて落とし込むってやり方を凄くするんですけど。だけど、それを敢えてやらないように、わからないってことがわかっていても、多分監督には何か策があるんだなと信じてやりました」

──役者として、また成長出来た現場でしたね。

「行定監督が今まで撮っていらした映画の中でも、またひとつ違う方向への決定打(作品)となるような映画だと思うし、本当にいいタイミングで、いい作品に出会えたなって思います。(今作では)本当に色んなことをやっているので、チラシにもある“衝撃”とか”ある仕掛け”はもちろんなんだけど、それ以上に面白いのは、こういう内容をアイドルがやるというギャップだとも思うんです。本当に(アイドルのイメージを)いちいち崩してくる、というか。”えっ!?”“こんなことするんだ?”っていう」

──そういう“崩す”作業は新鮮?楽しめましたか?

「新鮮でした。やっていいんだ!?と思ったし、そう思ったらもう好きなように出来たし。敢えて“アウトロー”の感じをいくというのが、凄く楽しかったです」

──アイドルだから、それをやりたくないという考え方もあると思いますけど、アイドルだけどやるっていうことが、中島さんの中で意味を持っているんですね。

「そうですね。そういうオファーが僕に来たことが嬉しかったです。台本を読んで、”えっ?”“おぉ!?”となりましたし(笑)。その前に、原作を読んでいたから。その映像化って言われた時に、ブワ~ッ!と頭の中を色んなことが駆け巡って。”あっ、あんなシーンも…え、こんなシーンもあるな”って。これ、やっていいの?と思ったんです」

──そうなりますよね。いいの?という描写がたくさんあって。

「だから、それをやることに意味がある気がするんですよね。崩していくことに面白みがあるし、やれたことが凄く嬉しかったんです」

──そういう考えって、前からあったんですか?

「そうですね。なんか“ジャニーズっぽくない”と言われることも多くて。でもそれって、いいことだと思うから。なにせ(Hey! Say! JUMPは)メンバーが多いので。役割分担とかポジションみたいなものを考えた時に、ひとりぐらいそういう人がいてもいいかなぁと思って。勝手な思いですけど(笑)」

──確かに…こういう雑誌を作っていると、中島さんってジャニーズというより、俳優さんのイメージが強くて。

「ああ~ほんとですか?アイドルですっ♡」

──(笑)。コンサートも拝見させて頂いたんですけど…。

「ははは!それは余計混乱するでしょうね(笑)」

──中島さんのお芝居への取り組みについても伺いたいのですが。『半沢直樹』は転機になった作品として挙げていらっしゃいますよね。

「そうですね、あの作品は大きいです」

──あのころから、お芝居がどんどん魅力的になってきているなと感じます。今、凄く芝居が楽しいんだろうなって。

「楽しいです。その違う分野をやるというのが、凄く楽しい。物を作る側の方達にも、僕のジャニーズっぽくないところを認めてくれる人がいる。ドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』の監督もそうですし、『中島は役者やったほうがいいよ!』って。一緒に食事をした時に、そう言ってくれて」

──嬉しい言葉ですね。『デート~』の中島さんのお芝居、肩の力が抜けていて、とてもよかったですもん。

「ほんとですか?その『芝居やったほうがいい!』って言葉が凄い嬉しくて。行定監督も、そういう僕を見つけてくれて。しかも、そのアイドルである面っていうのも、上手くこの映画で出して下さって。もう本当に敵わないんですよ、監督には」

──中島さんの色んな面をちゃんと汲み取ってくれていて。

「そう、色々と気にして下さって。本当に愛のある現場でお芝居をさせてもらったなと思って。感謝です」

──改めて、ですけど。初の主演映画にして、本当に難しい役への挑戦でしたね。

「はい、難しかったです。挑戦でした、本当に」

──クランクアップの瞬間、どんな心境になりましたか?

「やったー!って感じでした(笑)。終わったー!ってスッキリしました。やっぱり大変なシーンが多かったので、その撮影が終わったというのがまず達成感であり。不器用だったけど、一応自分なりにやり切れたんじゃないかと思えました」

──加藤君には、その後突っ込んだ感想は聞けていない感じですか?

「そうですね。でも、言って頂いたのは、『凄くわかりやすくなってるね』ということと、『これは間違いなく、裕翔の映画だよね』って。そういう風に言ってくれたのがとても嬉しくて。監督にも、釜山(国際映画祭)に行く前に『大丈夫かなぁ、不安だなぁ』って思っていたら『いや、これはもう自信もっていいですよ』って。監督が自らそう言って下さったのが嬉しかったです。”そんな…!そしたら、もう自信もちます!”って思っちゃいました(笑)。だから、加藤君にももうちょっと本当に自分のイメージが(原作と)合っていたかどうか?とか色々と聞いてみたいですし、その機会を設けられたらいいですよね。プライベートでご飯行ったりとかしたいなと思います」

──その釜山国際映画祭で海外を知れたことも、とても大きな経験になりましたね。

「現地のリアクションを少し感じることも出来たし。もちろん、Hey! Say! JUMPの中島裕翔としてのファンもたくさんいらして下さったんですけど。それ以上に、映画が好きなファンの方々が観て下さって、評価してもらえて嬉しかったですし、ただアイドルがやっているだけじゃないというところが出せたのはよかったなって。それこそ、アウトローな感じだし、わりと“重い”だけかなと思われがちですけど、実は青春映画だし、若者が突然の“死”を受け入れていく苦悩だったり、難しいシーンも多いですけど。映画好きの方にも、行定監督のファンの方にも、出演者みんなのファンの方にも、ひとつの作品として楽しんでもらえるような、大人のエンターテインメントになっていますので、是非劇場で観てほしいです」

 




『ピンクとグレー』

監督/行定勲

原作/加藤シゲアキ(『ピンクとグレー』角川文庫刊)

脚本/蓬莱竜太・行定勲

出演/中島裕翔 菅田将暉 夏帆 岸井ゆきの 宮崎美子 柳楽優弥 ほか

俳優・白木蓮吾(中島裕翔)が突然、死んだ。第一発見者は幼いころからの親友・河田大貴(菅田将暉)。蓮吾に何が起きたのか?動揺する大貴は、6通の遺書を手にする。遺書に導かれ、蓮吾の短い人生を綴った伝記を発表した大貴は、一躍時の人となり、憧れていたスターの地位を手に入れる。初めてのキャッチボール、バンドを組んで歌った学園祭、幼馴染みのサリー(夏帆)をとりあった初恋。輝かしい青春の思い出と、蓮吾を失った喪失感にもがきながらも、その死によって与えられた偽りの名声に苦しむ大貴は、次第に自分を見失っていく。なぜ蓮吾は死を選んだのか?蓮吾の影を追い続ける大貴がたどり着いた“蓮吾の死の真実”とは……。

 

 

+act  2016年01月号