思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

自分のできることをやれ

NEWS・加藤シゲアキの同名小説を、ジャニーズの後輩・中島裕翔主演で映画化。この『ピンクとグレー』は、小説の構造をさらに反転させた映画独自の仕掛けで、私たち観客を翻弄する。初映画で、この困難な役に挑んだ中島が手にしたものとはー。


2重構造の物語の中で現実との境い目が分からない時もあった
『ピンクとグレー』は、芸能界でもがき苦しむ青年たちを描いた作品です。中島さん自身、お仕事をする上で悩んだことはありますか。
    ありますね。メンバーとして言えば、Hey! Say! JUMPは9人もいるので、その中でどうやって自分は目立っていけるかなぁと、葛藤していました。その時はまだ、自分のやりたいことや、求められていることが分かっていない段階でしたけど、でも何か“武器”にしないといけないなと。ドラムを始めたり、カメラをやったり。自分にしかできないことを探す作業に入りました。もうそのころから山田(涼介)はバリバリ、ドラマとかやっていた。でも、彼と同じことができるかと言ったらできないから、そこで葛藤みたいなものが吹っ切れたんですよ。そこから考え方が変わりました。でも、メンバーに対しては葛藤がありましたね。今も、自分にしかできないことが見出せているかといえばそうじゃないんですけど。ただ、こういう風にお芝居のお仕事をいただくことが最近は多くなってきて、自分自身も嬉しいし、そこを突き詰められたらなと思います。
さて、今回の主演作では、どんな演技を心掛けましたか。
    役云々というより、初めての映画なので、自然な芝居をしたいなぁとなんとなく思ってたんですよ。そこがまず、目標で。普段、話しているような口調でセリフを言ってみたりする。そのことがまず頭にありました。このような2重構造になっている作品は初めてだし、それにふさわしい演じ方ってなんだろう?って。でも、これ、考え出すと分かんなくなっちゃって(笑)。僕が演じたごっちは、カッコ良くてカリスマ性があるんだけど、何を考えているのか分からないような表情をたまにする。シーンによっては(撮影)現場に入っても、誰とも口をきかないという時もありました。設定的にも、ある種の落差は必要でした。
芸能界が舞台ということが演じる上で足枷になったりはしませんでしたか。
    いや、逆にやりやすかったです。芸能界の裏を描いているので。僕が知らないようなドロドロした部分も描いているんですけど、(知っている世界だけに)リアルに演じることができたんじゃないかなと。インタビューを受けるシーンなんて、本当にリアルで。怖くなったほどでした。試写を観るシーンもあったんですけど、映画が出来上がってから、そのシーンを試写で観る訳ですから(笑)。一時期、現実との境い目が分からなくなりましたね。2重構造的要素もある作品なので。途中から、訳分かんなくなったんですけど、その訳分かんなくなる感じが(映画にとっては)良かったのかなぁと思います。誇張してる部分はすごくあるけど、でも、だからこそリアルなのかもしれない。「いるいる、こういう人」みたいな部分も含めて、共感を得られるシーンもたくさんあったと思います。

正解は決まってない  演技は、人それぞれの解釈のひとつにすぎない
「やりたいことではなく、自分のできることをやれ」というセリフがとても印象的です。芸能界だけでなく、あらゆる仕事に言えることだと思います。
    あのセリフは後々、効いてくる言葉ですよね。だからこそ、最初はあまり考えずに発していました。大事なセリフだからこそ、あの言葉が後々「ああ、そういうことだったのか」と分かるように。確かに、実生活でも活きてくるような言葉です。映画を観たお客さんが、「ああ、そうだよな」とちょっと腑に落ちるように。僕自身、やりたいことはたくさんあるんですけど、Hey! Say! JUMPはキラッキラな、フレッシュなアイドルの画が強いし、求められてもいる。だから、そういうことに似てるのかなと。
中島さん自身、演技している時に分からなかったセリフが、後で分かったみたいなことってありますか。
    それほど、分からないまま進むっていうことはないんですけど、(芝居の)答えっていっぱいあると思うし、しかも厄介なのは、どれが正解と決まっている訳ではないので。監督との話し合いの中で出た答えで、まず「やっていこう」と。それをまた(観た人によっては)違う風に捉える人もいるので。ホント人それぞれなんですよね、考え方って。いい意味で、ひとつの答えにこだわらないっていうか。「まあ、こうなんだろうねえ」というか。そういう雰囲気で(監督と)会話してる時もありましたし。
つまり、演技というのは、俳優と監督のひとつの解釈にすぎないと。
    そうですね。自分の経験でできるものとできないものって、あると思うんです。でも、結局あのセリフにもあるように「自分のできることをやっている」ので。
あるシーンでは、今、目の前にいる中島さんより精神年齢が上に見えます。また、あるシーンでは、中島さんより精神年齢が幼く映ります。演じるキャラクターの精神年齢については考えたりしますか。
    (演じる役って)見た目は自分とは変わらないんですよね。だからこそ、精神年齢が上か下かということは難しいです。精神年齢は、その人が考えていることによるんだと思います。この人のことをどう考えようかな。この人は、どういう風に物事を見ているのかな。その考え方ひとつで(人物の精神年齢は)変わるんじゃないかな。
演技は、役に成り切るだけでは成立しなくて、それがどう見えるかということが大事だと思います。特にこの映画にはある仕掛けがあるので、観客の解釈も重要になってきます。初めての映画が完成して、演技についてどんなことを思いますか。
    今回は特に難しかったです。どこまで、どのように演じればいいのかが。特殊な役ですからね。それが分かりにくくなってもいけない。ただ、そのことについて考えることができる、というのはいいことですけどね。簡単な役より、挑戦できるということは自分自身の糧になるし。それは、これから来る役についても、何か使えるかもしれないし。成長…ですよね。ひとつのことを真剣に考えるっていうことは。ただ僕は、分からないことがあると、周りの人に聞いちゃうんですよ。それはいいことなのかなと自負しています。あと、たとえば現場で孤独だと感じたとすれば、それも活かせると思う。自分の周りで起きたことを活かせるのが、この仕事のいいところ。(ドラマ)「半沢直樹」の時、周りがすごい(芸達者の)方ばかりで、緊張していたんですよ。でも、この緊張感、使えるなと思って。あの時からですかね。今、自分に起こってることを活かすようになったのは。芝居してても、結局は自分が“出る”んで。それが演技の面白いところです。


中島について行定監督は「彼、すごくいい役者なんだよね。白木の親友・河田役の菅田将暉もいい役者で、中島と菅田、全然タイプが違うからこそふたりの共演シーンは撮っていてすごく面白い」と、若き才能ある役者との仕事を心から楽しんでいた。

CINEMA SQUARE vol.79