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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

僕と僕。

ピンクとグレー magazine 中島裕翔

加藤シゲアキの処女小説「ピンクとグレー」が待望の映画化。陰のある主人公を演じるのは、加藤の後輩でもある中島裕翔。堂々のスクリーンデビューを果たした中島が抱える、知られざる葛藤。そして初主演映画への想いとはー。


  原作を読んだときから、僕が演じるごっち=白木蓮吾という役は難しいものになるだろうなと感じていました。シゲ君からは、僕がごっちに決まった段階で「すごく楽しみにしてる」って言われて。ご飯を一緒に食べに行ったときも、「ごっちは裕翔でいいと思うし、行定監督がどんなふうに撮るかも楽しみだね」ってポジティブなことをたくさん言ってくれました。撮影中に一度、現場に来てくれてお弁当を差し入れてくれたんですが、そのとき僕が役について、すごく悩んでいて「難しい」というようなことを言ったら、「その悩んでる姿がそのまま画に出るからいいんだよ」って優しくアドバイスしてくれて。だから僕も自分の葛藤を、ごっちに反映させる芝居をしようって思えた部分があります。

  今回は僕にとって初めての映画だったので、何より自然な芝居をしたいなっていう目標を自分なりに掲げました。普段、人と話しているような口調でセリフを言ってみようって…そこからでしたね。あとは、ごっちは大スターになっていく男ですから、カリスマ性みたいなものは意識したかな。とにかくカッコよくいなきゃというのは考えてました。関係ないですけど、ごっちってよくタートルネックを着てるんですよ。タートルネックって…カリスマだな!って思ったり(笑)。少し意外だったのは、最初は僕としてはごっちはもっとクールに演じたほうがいいのかなと思ってわりと感情を抑えていたんですが、監督が「もっと笑っちゃっていいから」って修正してきてくださったこと。でも、だからこそごっちって少し怖いのかなと思ったんです。あんなに無邪気に笑ってたのに、次の瞬間には何を考えてるか分からないみたいな感じが。その差がごっちなのかなって。基本は明るくて面白いヤツなんですけど、芸能界にどっぷりハマっていくことでだんだん変わっていく。逆に高校生のころのシーンは、将暉と夏帆ちゃんの3人でワイワイと楽しく撮影できたので、それがいいコントラストになったんじゃないかな。

 もともとそんなに器用じゃないので、気持ちが沈んでいるシーンを撮るときは、自分自身もボロボロな感じで、どんよりした空気で現場に入ってましたね。その日はスタッフさんともしゃべらないみたいな。ただ物語の舞台が芸能界だったので、そこは感情移入しやすかった。シーンがあまりにリアルすぎて、一時期現実世界との境目が分からなくなったりしてました(笑)。出てくるキャラクターたちも、誇張されてるからこそリアルだなって感じるところもありました。

 あと今回は、映画だから挑戦できたシーンがたくさんあるんです。タバコを吸うシーンなんてまず今までならありえないし、ラブシーンもそう。撮影中は暑いし、相手の方に気を使ったりもするしで大変でしたけど、結果すごくいい経験になったなと思ってます。あとこれは言っておこうと思うんですが、将暉と2人でかなり刺激的(!?)な場所に行くシーンがあるんですが、芸能人はあんな場所に行きませんから!そこは誤解のないよう…(笑)。そのシーンで監督自らが僕に「こうやって、こう動いて…」って演出をつける横で、夏帆ちゃんが「やめて~!」って言って、それを聞いた将暉が「なんで俺には言わんの?」って、突っ込んでたらしいです(笑)。正直すごく戸惑って、最初のほうは素でその困惑ぶりが顔に出てます。あの引いちゃってる感じは、演技じゃないので安心してください(!?)。ほかに“リアルな”アクションシーンもありましたね。将暉と殴り合うシーンは、夜中2、3時ごろに撮ったんですけど、「うわ~!!」って叫んだりしなくちゃならなくて感情のコントロールが難しかった!また将暉も今までのシーンとは打って変わって、何か偉そうなんですよ(笑)。撮影前に「ま、楽しみましょ!」とか言ってきて、「え?どうした急に!?」みたいな(笑)。でもそうやって僕をイラッとさせる距離感も、今思えばわざとだったのかもしれないですね。そんなふうに一度気持ちを奮い立たせて感情を作って臨んだら、奮い立たせすぎて(笑)、将暉の鼻に僕のひじが当たっちゃったんです。彼に馬乗りになって殴るっていうシーンで、体勢が崩れてしまって…。一瞬、2人とも「あ!」って素になりかけたけど、そこで演技を止めるのは将暉にも失礼だと思ったので、胸ぐらをつかんで怒る芝居を続けました。ただカットがかかった瞬間、土下座でしたね(笑)。案の定、少し切り傷が出来ちゃったんですけど、本人は「全然大丈夫!」って言ってくれて。ああいうふうに感情に翻弄されるのは初めての経験でした。抑えても抑えても、胸の内ではマグマみたいに燃えたぎるものがある。不思議な感覚でした。

メンバーの中で感じていた自分自身の葛藤を役に投影

 印象に残るごっちのセリフで「やらないなんてないでしょ」っていうのがあるんですが、これって後々すごく重要な意味を持ってくるんですね。映画を観ている人、どなたにも響く言葉かなと思うし、すべてが明らかになった後はいろんな意味で納得できるかもしれない。僕がいるHey! Say! JUMPもそうですが、わりと普段はアイドルとしてキラッキラしたものを求められるんですね。だからそれに応えようと思うのは当たり前だし、それをしんどいって感じることもない。むしろ楽しんじゃってる自分たちもいるし、切り替えるすべがないとこの仕事はやっていけないですよね。「やらないなんてない」っていうごっちのセリフも、そういうことなのかなと思います。もちろんセリフの解釈に正解なんてないし、その都度監督と話し合って方向性は決めていきますけど、観た方がそれとは違うふうにとらえてもらってもいいかなって。自分自身の話で言うと、ごっちを演じる上での葛藤とは違いますけど、僕なりに葛藤はありました。9人いるメンバーの中で、自分にしかできないことを見つけていかなきゃっていうのもあるし、何か武器を見つけたかった。でも山田(涼介)がバリバリドラマの主演を張ってるのを見て、彼と自分は同じことはできないって思った瞬間、吹っ切れたんですよね。自分にできないことが分かっているなら、自分ができることに取り組めばいいのかなって。そこから考え方が、少し変わった気がします。どのメンバーにも自分が負けないことですか?…長身なこと?しょーもないですね(笑)。ただ今はこうやってお芝居の仕事を頂く機会も増えたので、本当にうれしいです。

 今はもっと映画の仕事をやりたいって思いがすごくあります。映画にハマりました!将暉や監督との出会いも大きかったし、毎日刺激になることばっかりでしたね。監督は何度もリテイクして粘るときも多かったですけど、逆に僕はそれがうれしくもあり。妥協しない人だってことだし、それだけ求められるっていうのはありがたいことだなって。ただ後々考えると、あれはもしかして試されてたのかな?と、急にゾクッともしました。そう思うと、「もっとああしておけばよかった!」って反省点もまだまだありますね。あと監督がおっしゃってたのは、僕と将暉のタイプが違うってこと。将暉はわりと最初の1テイク目で芝居を決めてくるけど、僕はやればやるほど(役に)近づいてくると。「2人がすれ違うから、2人の沸点をピタリと合わせるのが難しかったよ」って。そういう作業も含め、短い撮影期間の間にどんどん自分を追い込めたし、ストイックになれたかなと。その厳しさも映画でしか体験できなかったことの1つですね。時間の流れなど、少し複雑なところもある作品ですが、僕の初挑戦が詰まった映画になりました。最初に完成作を観たときは自分の芝居をチェックすることしかできなくて、少し落ち込んだりもしたんですが、観れば観るほど自信につながっていく気はしています。ぜひ、何度か繰り返し観てもらえるといろんな発見があるかなと思います。

 

[ 映画館の思い出 ]

 今も新宿や渋谷の小さい映画館に、1人でふらっと行くことが多いんです。この前観たフランス映画『やさしい人』は内容が重いけど、面白かったなぁ。子供のころはよく観ている最中にトイレに行きたくなってました。(上映前に)「やばい!ジンジャーエール飲みすぎた〜」って(笑)。そのせいで大事なシーンを観逃したりしてましたけど、もう大人なので最近はそういう失敗はしていません!


[ 結局、みんな本当の自分なんです ]

  コンサートのときなんかは、メンバーと盛り上がることもしょっちゅうなんです。そこで「うわ〜ははは!」って大爆笑してた次の瞬間…ふっと静かに椅子に座ってジュースなんかを飲んでいると、みんなに「その顔!怖いから!」ってよく言われますね(笑)。自分ではそれが二面性だとか裏の顔ってふうには思ってなくて、至って普通のこと。でも無意識に、場によって自分を使い分けてるみたいなことはあると思う。長年この仕事をしているので、アイドルとしての仕事、1人でのドラマの仕事、それはやっぱり違う顔になってますよね。きっと。例えば雑誌の撮影でいわゆるアイドルとして、キャッキャッした画を求められれば、そういう顔になりますし。でも、結局はアイドルの自分も、芝居をしているときの自分も、普段の自分も本当の自分なんですよね。それが大変だって感じたことはないですよ。


行定監督×中島の初タッグが重圧をはねのけ挑んだ現場

  我々が密着したのは、中島裕翔演じる蓮吾が自身の主演映画の舞台挨拶に臨むシーンの撮影現場。フォーマルな黒のスーツに身を包んだ中島は、クールな表情で壇上に立つと、人気俳優・白木蓮吾さながら輝かしいスターのオーラを振りまいていた。この日、現場となった都内某所のイベントホールは、エキストラとして観客役や報道記者役を任じられた我々取材陣で埋め尽くされ、すべての視線は舞台中央にいる中島らに注がれている。やがて行定勲監督が彼に近づき短い言葉を交わすと「はい、じゃあ回していくよ!」と本番開始を宣言。
  無数のフラッシュが炸裂する中、蓮吾らが次々と舞台挨拶のコメントをしていく。と、行定監督が途中で突然カットをかけ「出演者がしゃべる間って普通カメラのフラッシュはないよね?」と提言。あくまでもリアリティを追求する行定監督の姿勢に一同ハッとさせられた瞬間だった。フラッシュのタイミングを協議している間、中島は壇上の共演者と先ほど自身らがアドリブでしゃべったコメントについて談笑。「何が“素晴らしい映画です”なんでしょうかね。何も知らないのにね(笑)」「僕はどんな役だったのかなぁ」などと冗談ぽく言って、終始リラックスした様子。出演が決まるずっと以前に原作本を読んでいたという中島。事務所の先輩であるNEWS 加藤シゲアキのデビュー小説の映画化、しかも映画初挑戦で主演を務める重圧は計り知れないものだったろう。だがそれを見事はねのけ、若くして非業の死を遂げる白木蓮吾というキャラクターを作り上げた中島の意気込みは称賛に値する。彼を導く手ほどきをしたのは『世界の中心で、愛をさけぶ』などのヒット作を世に送り出した行定監督。2人がタッグを組むのは、もちろん今回が初めてだ。でもそんなことを感じさせないほど2人の息はピッタリで、互いの才能を認め合い信頼している場面が撮影の合間に幾度となく見受けられた。
  撮影半ばになって、カメラを構えた報道記者役の取材陣の中に顔見知りが複数いることに気づいた中島は「ビックリした…冷や汗がすごい」と苦笑い。その後、彼らが向けるカメラに余裕の笑みでポーズを取り、ちゃめっ気を発揮するひと幕も。
  約半日に及ぶ撮影が終了し、スタッフが会場にその旨を告げたとき、中島が自らマイクを手に取り客席のエキストラに向かって「今日は朝からご協力ありがとうございました。なかなかできない経験ができたかと思いますが、皆さん楽しかったですか?」と挨拶。そのうれしいハプニングに客席、そして行定監督までもが満面に笑みをたたえ、中島に拍手喝采を送っていた。


みんなの支えで乗り越えたヤマ場だらけの撮影現場
  映画をやってみたい気持ちはあったんですけど、ドラマとは違う作り方だと聞いていたし、全然違う土俵というイメージがあったのでうれしい半面、不安もありました。原作が加藤シゲアキ君の小説家デビュー作ということで、自分が主演することによって作品の持つ良さをぶち壊してしまったらどうしよう、と余計にプレッシャーを感じたんです。でも一方で「やってやるぞ!」という気持ちもあって、すごく複雑な心境でした。
  行定監督とは撮影中、いろんな話をしました。自分にとって毎日がヤマ場のような感じだったけど、中でも一番キツかったのは撮影2日目に泣きの芝居があったこと。映画の後半のシーンだったので「えっ、もうやるの?」と驚いたのと、蓮吾のように身近な人を亡くした経験がないから、死に向かっていく彼を演じるのは難しいと感じたんです。お芝居には自分が経験したことを糧にする部分と、技でやる部分があると思いますが、僕にはまだ技がない分、経験のないことを演じるには「この役ならどうするか」と考え、模索しながらそれを膨らませるしかなかった。そんな中、行定監督と話し合うことで見えたものが多々ありました。今までやったことのない役で、ファンの方がどう受け止めてくれるか正直、恐ろしくもありますが、僕は演じていて楽しかった!どこまで蓮吾役に成り切れたか分からないけど、ほかのキャストの方々の力もあって、蓮吾のダークで“イヤ〜な”感じは出せたんじゃないかと思っています。行定組の皆さんには本当に感謝しています。
  行定監督は、自分とは違う次元で生きてるような感じで「ちょっと怖そう」というイメージがあったけど、実際お会いしてみたらすごく気さくな方だった。ただ、いざ撮影現場に入るとやっぱりアーティスティックで、独特の存在感があるんですよ。うまく言葉にできないけど、行定監督の撮影方法って“そこに存在するもの”をカメラに収めていく感じで、僕にとってはすごく新鮮でした。演出に関しても、最初に自身のプランをバーンと言うのではなく、僕の演技を見てから「こうしよう、ああしよう」と軌道修正していくんです。そういうやり方もあるんだなと、勉強になりました。
  僕のベースはHey! Say! JUMPですが、芝居をするときはそのイメージをどれだけ払拭できるかだと思うんですよ。お芝居をしているときはジャニーズの中島裕翔でなく「そういえば中島裕翔ってジャニーズだよね」と言われるくらいになりたい。そこを目指すのはジャニーズの先輩たちを見ているからで、特に岡田君は「この人がジャニーズにいる!」と思うとすごくうれしいし、自分もいつかこういう人になりたいという励みにもなります。役者さんと同じ土俵に立つには、自分もやっぱり100%役者に成り切らないと。その目標に向かって、これから一歩ずつ歩いて行きたいです。

 

Cinema Cinema SP. 2015autumn