思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

少しは周りから認められたかな


相手の実力を認めているからこそ、どうしても負けたくなかった。よきライバルは、いつしか同じグループのメンバーとなった。そして、走り始める。自分たちのグループは最強になれると信じて。




小さいころは今みたいに負けず嫌いな性格じゃなかったから、ライバルが誰かなんて考えたこともなかった。それなのに、11才で事務所に入ってすぐ、リハーサル室でいっしょに踊ってるJr.全員を見て絶対負けたくないっていう衝動にかられた。いちばん後ろの列で踊ってたくせにね。でも、俺はその中の誰よりも努力してる自信があったんだ。レッスンが終わって遊びに行くみんなの姿を横目に、俺はまっすぐ家に帰って自主練を繰り返した。部屋には、ダンスが確認できるように全身鏡を置いた。リハーサル室も鏡張りだったけど、目の前で何十人も踊ってると、自分の姿はまったく鏡にうつらなかったから。それから1年がたったころ、ドラマの収録で忙しかった裕翔の代わりに、タッキー&翼のコンサートに出ることが決まった。と同時に、本番まで2日しかない中で、24曲の振りをまるごと覚えなきゃいけなくなった。リハーサルの時間だけじゃ足りなくて、振りつけを知ってるJr.をうちに呼んで、徹夜で練習したのを覚えてる。なんとか無事に本番を終えることができたとき、”俺は後ろから見てきたJr.たちに負けてない!”って思えたんだ。


俺になくて、裕翔にあるものって何なんだろう?

初めて特定の誰かをハッキリとライバル視したのは、裕翔だった。タッキー&翼のコンサートで代役をつとめて以来、裕翔とシンメで踊る機会が増えていったことも関係してたかもしれない。当時の裕翔はテレビで歌ったり踊ったりする以外にドラマや舞台の仕事も多くて、いつも忙しそうだった。俺も、このまま努力しつづければ、裕翔みたいな人気者になれるかもしれないって思ってた。でも、Jr.の中で誰か1人がセンターをつとめるとなると、選ばれるのは必ず裕翔で、俺はその後ろ。俺になくて、裕翔にあるものって何なんだろう?今までいくつもの背中に追いついてきたけど、もしかしたらこの背中の前にだけは立つことができないのかもしれない。裕翔の後ろ姿を見ながら、そんなふうに思い悩む日々がつづいた。
 
だから、JUMPとしてデビューして、『Dream come true』のPV撮影でスタッフさんから「山田と高木が真ん中に立って」って言われたときは、自分のまわりだけ雷が落ちたみたいに何が起こったのかわからなかった。”今回だけかな?”って思っていたら、次のシングル曲のセンターは俺1人だった。そこは、Jr.時代からずっと”いつか立ちたい”って思い描いてた場所。ようやくその夢が現実になって、”俺も少しはまわりから認められたのかな”ってうれしかった。でも、裕翔とはおたがいの立場が入れ替わった気がして、どう接していいかわからなくなっちゃったのは複雑だったな。
 

俺がここまで来られたのは、ライバルがいたおかげ。

あれから5年。俺は大人になったし、裕翔に対する気持ちを整理するには十分すぎるくらいの時間が流れた。おたがいにたくさんの経験を積んできた今も、裕翔にできて、俺にできないことはたくさんある。ドラムやタップダンスを仕事にいかしたり、雑誌のモデルをつとめたり、カメラや乗馬に挑戦したり、いろんな色を見せてくれる裕翔は本当に魅力的だと思う。俺がここまで来られたのは、間違いなくそんな最高のライバルがいたおかげ。ライバルだと認めた裕翔とだからこそ、これからもずっと切磋琢磨し合える関係でいたい。
 
裕翔だけじゃない。JUMPのメンバーは、全員がライバル。それぞれが持つステキな色は、負けず嫌いな俺の心を奮い立たせてくれるんだ。これからもずっと、おたがいを刺激し合いながら、JUMPを育てていこう。



2013.11 Myojo 真紅の音vol.8