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思惑の落し穴

恋はすべてどこまでも片思いだ。

迷って抱えて歩け。

magazine 中島裕翔 PERSON

大抵のことが”白か黒か”で語ることができないように”自分らしさ”とか”個性”とかにも正解なんてない。「迷わず行けよ」と言ったプロレスラーもいたが、そんな簡単な話ではないし、悩むこともある。で、彼の進む道はどんな道なのだろうか。中島裕翔の”今”を聞いてみた。
 
周りの大きな期待を背負い、Hey! Say! JUMPとしてデビューしたのは彼が14歳の時。誰もがエリート街道を突っ走ると思った中島裕翔の道は意外と険しく、しばらくすると自分の居場所を模索する日々が始まった。その頃の彼はバッグに重い荷物を抱え込んで、でも周りに悟られないように”全然軽いよ”という顔をして歩いていた気がする。
けれど、今は違う。パッと何かが開けたような爽快な表情をしていて、時に堂々とした空気さえ漂う。その変化を見ていたら、今現在の彼のバッグの中身を知りたくなった。


──’14年はメディアでいろんな一面を見せたり、自分の過去を語っていたりした印象があるので、今回は現在のことを伺いたいなぁと。
「とりあえず、もっと仕事がしたいっていう気持ちですね。『水球ヤンキース』が終わって1カ月もしないうちに『あー仕事したい!!』って虚無感みたいなものを感じて。周りには『少し休んでいいんだよ』って言われるんだけど、本人の感覚は違うんだよね。時間があると、昼前に起きて朝か昼か分からないご飯を食べて、犬と戯れて、あとは趣味の時間みたいな…ダメな生活しちゃうし(笑)」
──でも、午前中に起きればセーフですよね。午後に起きた時のダメ人間感といったら(笑)。
「そう!7、8時に目が覚めるから、その時に起きればいいのに、ついつい…。もう、二度寝パーティーだよね(笑)。ドラマ撮影に入ると規則正しい生活になるし、忙しくしている方が好きなんだって、あらためて思った」
──忙しくないと不安っていうのもある?
「あるかも。でもね、昔の不安とは全然違うんですよ。それこそ、中高生の頃はドラマのお話をいただくこともあまりなくて、メンバーと自分を比べて焦りを感じることがあったけど、そこは1回吹っ切っているから。それにメンバー9人もいたら、常に全員が個々の仕事でフル稼働できるわけじゃないしね。カッコよくいえば、メンバーでバトンを繋ぐみたいな感覚。自分で頑張って『次はお前行って来い!』って背中を押すみたいな。むしろ、後押しできる自分になってなきゃって思う」

──ドラマ出演が続いたことで、自分の中でのお芝居のウエイトも大きくなっています?
「大きくなっていると思う。JUMPの活動があるから、お芝居の仕事ができるっていうのは大前提だけど、同じ現場に立つからには、俳優一本でやっている皆さんと変わらない気持ちでやりたいっていうのもあります。究極のテーマは”求められているものと、やりたいことのバランス”だなって。そういう意味で、二宮くんはそこのバランスを極めている人だなって思う。だから、共演できた時はすごくうれしかったし、なんかね、俺の中の概念が覆されたんですよ(笑)。二宮くんって台本通りにセリフを言わないこともあるんだけど、それなのに言いたいことがすごく伝わってくる。しかも、周りを納得させちゃうだけの力量もあるのが、カッコいいなって。目指すところは、そうやって求められるものにちゃんと応えられて、振り切る時は思い切り振り切れる俳優になることかな」
──お芝居といえば、やはり『半沢直樹』の印象が今も大きいのかなと思うんですけど、あらためて自分にとってどんな作品でした?
「俺って、世間的には子どもっぽいイメージがまだまだあると思うんですよ。昔から知っているスタッフさんが、『中島裕翔にあの役をやらせようって思いついたのがすごいな』と言っていて。”そうか、こういう役が想像できないのか”と思ったの。そこは『半沢~』のお陰で少なからず払拭できたかなと思う」
──確かに、「え!?これ…中島裕翔くん?」っていう驚きがあったと思うんですよね。
「まず、スーツで七・三分けだし(笑)。とにかく必死で、毎日、胃が痛くなるくらい緊張したけど、それが中西の立場や心情と重なって、逆に良かったのかなって。あと、それぞれの人物が濃すぎるくらい濃いけど、それが一人一人にマッチする面白さもあったと思う」
──現場の空気も違いましたよね。隣のスタジオで違う作品を撮影していても、『半沢~』のスタジオ前から空気が変わるみたいな(笑)。
「そうそう(笑)。グレーとか、コンクリートとか重厚な感じ。隣で『ぴんとこな』の撮影をしていたんだけど、向こうのスタジオは黄色いオーラ出ているなみたいな(笑)。優馬が楽屋に来てくれたりしたんだけど、お互いの格好を見ると、違う土俵の人みたいな感じだった。本当に勉強になったし、俳優・中島裕翔という言い方をするなら、それを強く後押ししてくれた作品だと思います」

──その後、「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」、「水球ヤンキース」と学園ものが続き、「デート~恋とはどんなものかしら~」では久々のラブコメ
「しかも10年ぶりの”月9”で、脚本が古沢さん。きっと、これまでの経験では、通用しない場面がいっぱいあるだろうなって思う。だからこそ、新しいことをいっぱい学べるって思うと、すごく楽しみなんです」
──今回、演じられる鷲尾豊はすごく偏った男女の恋愛に割って入る難しい役ですよね。
「本当に難しくて。間とか、本気度の温度とか。とにかく、狙わずにやろうと思っています。正しいと思って素直にやったことがおかしい、面白いっていう風になればいいなって。あと、鷲尾って現代的な一般論を持っているんだけど、依子と巧の気持ちも分かる部分があるんですよ。巧さんはちょっといきすぎだけど(笑)。例えば、台本で自然と依子の考え方に共感して、鷲尾のセリフを見た瞬間、”あ、これが普通なのか”って気づかされることもある(笑)」
──台本を拝見していると、鷲尾の方がおかしく思えてきちゃうというか。
「本当は2人が正しいのかもって(笑)。そこが面白いし、常識をひっくり返されるのが楽しい。多分、少し古いんだと思うよ、依子の考え方って。時代は繰り返すっていうけど、台本読んでいると、結婚に関しても依子と巧みたいな形もありなのかもって思えちゃう。それは、俺の中にも古い感覚があるからかもしれない。この間、岡田准一くんも出ている『蜩ノ記』を見たんだけど、役所広司さんと原田美枝子さん演じる夫婦が敬語で話していて、すごく素敵だなと思って。敬語って”相手を敬う”言葉でしょ?今は”ラフにいこう”、”Take It Easy”みたいな風潮があるけど、大事にしなきゃいけない部分までラフにするのは違う気がして。時代もあるだろうけど、昔の夫婦の形を見て素敵だなって感じた。ただ…鷲尾は違うタイプだから、今はその気持ちは封印しておきます(笑)」

──たしかに(笑)。少しお話は変わるのですが、この1年ほど、過去の自分の葛藤について話す機会が多かったと思うんですよね。ぶっちゃけになるんですけど、話すことでラクになったのか、どこかに抵抗はあったのか…。
「本来は、悩みを人に話すタイプではないし、話さずスマートにやり続けるほうがカッコいいのかもしれない。でも、ファンの人が知りたいと思ってくれるならっていうのが大きかったかな。本当はこういう人なんだ、あの時そう思って頑張っていたんだって思うことで、何か感じてもらえるなら…って。だから、話すのはイヤじゃなかったよ。きっと、話すべきタイミングだったのかなとも思うし」
──5年ほど前だったと思うんですけど、自分の道を模索しているんだろうなっていう時期で。「将来、武器になるものを身に付ける時間だと思う」って、必死にいろいろ挑戦していた姿が印象に残っているんですよね。
「あー高1、高2くらいの頃ですよね。カホンとか、写真や乗馬にも挑戦したりして。やっぱり9人もいるから、自分の武器になるもの、自分らしさを探していた時期だった」
──でも、思い返すと…当時、夢として語っていたことが形になり始めているなぁって。
「そう!お芝居にしてもそうだし、グループの冠番組が欲しいとか、ラジオをやりたいとか、いろんな夢が叶ってきていて。精一杯努力はしてきたつもりだけど、ファンの皆さんや周りの方の力がないと難しいことで。言霊じゃないけど…口にすることで環境がそういう方向に向いたり、タイミングが回ってきたりというのもあるのかなって感じる」
──時に言葉にすることも大事ですよね。
「そこは、20歳超えて少し変わった部分もあるのかな。年上の方とご飯に行く機会が増えて、自分の思っていることを少し話すようになったり…。といっても、今も基本は心に秘めるタイプ(笑)。でもね、まったく関係ない弟とかにポロッと言うと、俺が悩んでいることって小っちゃいなと気づいたりするんです。人間って勝手で、自分に都合がいいように考えたり、美化したりする部分があるでしょ?例えば、ツラいことがあったら、自分を悲劇のヒーローに仕立てて、自分で不安を大きくしているのかもって。でも、人に話すとなんて小さいことで悩んでいたんだって気づくこともあるから、本当は言った方がいいんだろうね。ただ、俺、悩みがあっても現場に行けばスイッチ切り替えられちゃうんですよ」
──仕事をする上ではいい部分ですよね。
「仕事している時はスイッチの切り替えができることが助かるんですけど…。オフになって我に返ると『あ、宿題残ってたわ』って、学生みたいな気持ちになるんだよね(笑)」
──実は、宿題という荷物がいっぱいある?
「掘り下げると、結構あるかもしれない(笑)。しかも、気づくと放っておけない性格だから、見ないふりができなくて。でも、今は”保留”ができるようになった。だから荷物がいっぱいあっても、これもある、あれもあるって焦るんじゃなくて、1回見て、順々に自分のペースで解決していこうって思えるから」
──ちなみに現在、保留案件はありますか?
「なんだろう…。あ、もうちょっと自立したいっていう気持ちはあるかな。実家に住んでいると、やっぱりラクできちゃう部分ってあると思うんですよ。仕事でも周りの方に力を借りる部分がいろいろあるから、意識を持たないと自分でやらずに終わっていくことがたくさんある気がして。そこで、人に頼りすぎるのは良くないって思っちゃうんだよね」
──それは、”自分でやる”感覚をなくしたくないっていう気持ちがあるということ?
「それはある。掃除や料理をするとか、当たり前だけど自分で切符を買うとか。でも、当たり前のことが自分でできるのは大事。何事も歳を重ねて身に付けるのは大変そうだから、今のうちに何でもやっておきたいなと(笑)」
──まだまだ大丈夫ですよ(笑)。グループとしての未来はどんな風に考えていますか?
「JUMPの仲の良さが、また一段階上がっている気がするんです。それに今、個人個人がいろいろ経験を積んでいるから、集結した時にもっと大きくなれるはずだし、だからこそ一人一人、経験を重ねることは大事だなって。あとは、もっとバラエティーで自分たちらしさを出せるようになりたい。JUMPって内弁慶が多いんですよ。温室育ちなの(笑)。9人でいる時はバカなことしているのに、違う土俵に入ると内弁慶が出ちゃって。だから、自分たちを開放して前に出てきたいなと思う。他力本願じゃなく、自力本願で!」

今、バッグに入っているのは大事に育てた自分の武器と壁を越えた自信、そしてメンバーへの絶対的な信頼。ひょっとしたら、昔より重くなっているかもしれないけれど、その分、中島自身が大きくなっているから、涼しげな顔でそれを背負っていられるのだろう。
 




PERSON vol.29より